【暗殺教室】アネモネに包まれた少女。 (ページ8)

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六輪目(浅野君side) ページ8

……やってしまった。

言い過ぎたかもしれない、などと思いこっそりAの後を付いて行くと手を洗いながらAはぽろぽろと涙を零していた。

……やってしまった。

何をしているのだ、僕は。

“全ての支配者”どころかたった1人の女子……

いや、たった1人の想い人さえ支配出来ていないでは無いか。

「…………くそッ」

僕の虚しい声は夕暮れの色と共に消えて行く。

勉強に戻り、少しするとお母様とAが作っているであろう夕飯の匂いが立ち上る。

……何が、支配者だ。

ふと、僕はシャーペンを動かす手を止める。

……何が、完璧な中学生だ。

たった1人の……初恋の、片想いの相手の心さえ支配出来なくて。

「……」

……まぁ、これは努力せねば勝てない戦いだと知っている。

……誰に勝つ？

……いや、相手は多い。

榊原、赤羽、潮田、……他にもきっと知らないだけで多い。

……でも、本当にそうか？

僕は……そもそも土俵に立てているのか？

「……学秀、ご飯出来た」

ドアの向こうでAの声がする。

「……あぁ」

Aは決して僕の部屋に入ってこない。

……警戒されている。

まずは、警戒を解かなければ。

……話は、戦いは……それからだ。

いつの間にかすっかり暗くなった窓の外の景色を見、思う。

……もう一度、最初の頃のように。

仲良く……していた頃のように。

……「プライドは一度足元に置いて」。

……振り向かせてみせよう、すっかり笑い声の消えてしまった……この家と、家族に誓って。

「……完璧な支配者になれるように。」

僕は意志を固める様にそう呟くと、お母様とAが待っているであろうリビングへ向かった。