第七話 em視点 ページ8
『僕は、いつ帰れるんですか…?』
不安そうな声音で、涙を溢したまま彼は言う。異形の顔で、私達には聞き取れない言葉を、喋っていた。
私とトントンさんは只管驚きに何も言えず、ぽかりと口を半開きにして呆然としている。
やがて相手の方が先に口を開き、沈黙を破った。
「……、……………。
…………夢、やない、やんな?」
「……失礼、ちょっと頬を抓って頂いても…?」
「おう」
「あいててて」
きゅっと控えめに、けれど成人男性の力で抓られた頬は、指の圧から解放された後もじんじんと痛みを訴えている。
それが夢でないことを物語っていて、私はただ「現実ですね」とだけ言った。
「B級とちゃうねんぞ……今まで人間だったのが急に変身するて、それなんて映画?」
「然もヒーロー側じゃなく
「せやな」
引き攣った表情のまま、けれど怖いもの見たさも手伝って思わずコウくんの…そうそう、彼の名前だけは分かったのだが、余りにも明記し難い発音だった為コウと呼ぶ事にしたのだ。その突然変貌した顔をまじまじと観察する。
態勢を変えた事により顕になったのは、2をゆうに越える数多の目。今まで長い前髪に隠れて見えなかったのだ。
額や頬があった場所の皮膚と肉は粘土みたいに溶けて歪んで、壁紙を剥がすように目が表れて数が増え、今や両手に余るほどになっていた。
口は蕾のようにぱくりと円状に裂け、奥に鋸のように鋭い牙が覗いている。
その奥は、残念ながらここからでは良く見えない。然し小さな口のようなものが…あったような…?
目を凝らして見つめていると、睨んでいると思われたのだろうか、コウ君は恐々と此方の名前を呼んできた。
先程身振り手振りで伝えた情報がしっかり活かされていることに、なんだか場違いにホッとする。
…いや、というか、それより。
これによって益々彼の正体がわからなくなってきた。何処かの希少種族かそれとも既存の生物の突然変異か?前者にしては、聞いたことすらない。後者ならば…考えられるのは人間のそれだったが、それにしてはこれまで見ていた“彼”の変身の様子は何だったのだろう?
…これは、何となく、我々の手に余るような気がする。
そうトントンさんに伝えると、彼も大きく頷いて、我々の知人に伝えることを提案してきた。
私もそれに同意して、然しそれから首を横に振る。
「先に、ロボロさんからの連絡を待ちましょう」
318人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います!多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン?なの初めて見ました!めちゃくちゃおもろいです!応援しとります!頑張ってください! (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ニノ | 作成日時:2022年9月14日 1時