第四十五話 ci視点 ページ46
ほら水飲み、と空のコップに新しく水を注いでやると、相手は軽く頭を下げてそれを一気に飲み干した。おいおいそんな風に飲むと…
『かりゃい…』
「ゆっくり飲め、ゆっくり。そうそう」
赤子を世話するときの様に背中をさすって新しい水を飲むのを手伝ってやると、やっと落ち着いたらしく一息吐き出していた。
まだひりつくのであろう舌を出した瞬間、俺の視線はそれに釘付けになる。
「いやあ、文字が読めないって不便なんやな」
「………………。」
「…どうしたチーノ？」
「っは、ぁ、だ、だいせんせ…」
様子が可笑しい俺に、大先生が怪訝そうに声をかけてくれる。
俺は今見たものを信じられない気持ちで、幻覚ではないことを祈りつつ同時に幻覚であれと願いながら、コウの舌を指差した。
「こ、此奴の舌…」
「あん？……？！……は？」
「歯ですよねやっぱ！？」
不意に響いた大声に混じった不穏な台詞。
それに反応した他の面々が、どうした何だと視線を寄越した。
ただ唯一、騒ぎの張本人だけがキョトンとしている。舌をしまい忘れた猫のような顔で、けれどどの生き物にも本来あり得ない構造を持ちながら。
「し、舌に口があるんすよ…」
「あぁ？……うわホンマや！え怖！？」
ギョッとしたようにロボロが身を引く。それを隣にいたシャオロンが受け、うわぁ、という顔でコウを見ていた。
「何？特殊メイク？」
「いや動いとる…本物や」
「えぇちょっと、何ぃ？ドッキリこれ？」
「お、お前ら落ち着けって！し、下に口があるくらい、何でもないやろ？」
「下ネタとちゃうねん。ベロにあんねん口が」
「はあ？？」
困惑を滲ませながらゾムは身を乗り出し、それを認めるとうわっと驚いた声を上げる。
コウは戸惑った顔をしながら、問題の舌を口の中に引っ込めていった。
口の中にある舌に口がある？いやでも、そうとしか形容できない。下の先端にチャックのようについていた口には、ギザギザに尖った鋭く白い歯が環状についていた。
「…お前ら、落ち着け」
「いや落ち着けるか！トントン、こいつ何者やねん！？」
「わからん」
「わからんて」
「いや、ほんまにわからん。ただ…」
「ただ？」
人間でないことは、確かや。
それを聞いた俺は思わず、自分がB級映画の世界でずっと暮らしていたかのような、ひやりとした心地になる。
トントンとエミさん以外の他のメンバーも同じようで、何とも言えない顔をしていた。
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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います！多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (
レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン？なの初めて見ました！めちゃくちゃおもろいです！応援しとります！頑張ってください！ (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニノ | 作成日時：2022年9月14日 1時
