第三十三話 ページ34
怒られちゃった。
空のお皿を前に、身を縮こませる。
うつせんさいさんが吐き出す煙の正体は、どうやらこの白くて短い筒のような物らしかった。先端に火を付けていて、放置していても煙が細く立ち上っている。
僕の世界では見たことのない道具で、重量のない布のような煙とそれとつい遊んでいたら、見つかって取り上げられてしまった。
えーみーるさんがちょっと怖い顔をしていたけど、なにを言っているのかはわからない。けど怒られたのは確実で、僕は大人しくしゅんとしていた。
『はー…火傷してないんならええけどね。』
「ご、ごめんなさい…」
しょぼしょぼと小さくなる。怒ったえーみーるさん、圧も迫力もない分此方の罪悪感が凄い。
反省してる僕をみて、えーみーるさんはやっと困った風に笑ってくれた。
『まあ反省しとるみたいやし、まぁええか。』
『触るとは思わんかったわァ…煙草が珍しかったんか?』
『いやいやまさか、それはないわ!今や普及しまくっとる嗜好品やで大先生。どんな田舎から来たっちゅーねん』
それから間も無く、周りは先ほどの賑やかさに戻っていく。しゃおろんさんは何故か緑の人に大量に食事を口に詰め込まれていて、うつせんせいさんはそっと白いそれの火をぐりぐりとお皿に押し付けて消した。ふっと煙が途切れ、残り香が鼻を掠める。
えーみーるさんはろぼろさんと何やら話していて、僕は空っぽのお皿を前に大人しくしていた。何をすれば良いのかわからなかったし、下手に動いてまた迷子になったり怒られたりするのも嫌だったから。
やがてえーみーるさんも食事が終わって、『ごちそうさま』と両手を合わせる。
僕は不思議に思いながらそれを真似し、えーみーるさんは何故か小さく笑っていた。だいせんせいさんも何故か微笑ましそうにこっちを見ていた。
『なんかこう…ちっさい子が親の真似してんの見てるみたいやわ』
『え、俺親なの?パパなの??』
『エミさんパパになるんか』
『は、はぇ〜、童貞のクセにおと、お父さんになるんすか!』
『ちょ、なんか語弊ある言い方やめてくれへん?人工授精ちゃうねんぞ』
何かしらろぼろさんが話しかけて、緑の人もそれに続いて。あっという間にまた賑やかになって、皆仲良いんだなあ、とその真ん中にいる僕はぽつんと座っていた。
話している事はちっともわからないけれど、悪い顔をしているのに、誰も嫌そうじゃない。寧ろ笑ってる。
ふふ、と、温かい気持ちが溢れた。
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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います!多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン?なの初めて見ました!めちゃくちゃおもろいです!応援しとります!頑張ってください! (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノ | 作成日時:2022年9月14日 1時