第十二話 ページ13
コンコン、と部屋のドアがノックされて、書くことに集中していた僕は思わずびくっとする。
慌ててインク瓶の蓋を閉めてティッシュでペン先を拭いていると、ドアノブが回され、メイド衣装を着た人が入ってきた。
『お食事をお待ちしました。』
「あ、え、えっと…」
『…?此処に置いておきますね。何かあれば、こちらのベルを鳴らしてください。私は外で待機しておりますから。』
「あ、ありがとう、ございます?」
メイドさんは窓の近くにある丸いテーブルにトレーを置くと、ペコリと一礼して部屋から出ていった。
…足音がないし、部屋のすぐ外にいるみたい?見張りかな。
僕はなんだか落ち着かない気持ちになったけれど、とりあえず朝から立ち上がって、トレーの近くまで近寄っていった。
「…わ、おいしそ。」
銀のトレーに乗せられた食事のメニューは、オムレツだった。ふわふわとした卵にトマトソースが乗っていて、米もなんだか全体的に赤い。人参やグリーンピースが混ざっているのが見えた。
添えられた魔法瓶の中を覗いてみると、中身は水だった。氷が入れられていて冷たそう。
おやつも夕食も食べていない僕の腹は、あんまりにも美味しそうな匂いに、くぅ、と内側に音を鳴らした。
「…た、食べていいのかな…?」
きょろりとドアの方を見てから、なるべく静かに椅子に座る。
いただきます、と両手を合わせてから、スプーンを手に取って食事を始めた。
「…??……???」
あれ、なんか…おかしいな?
美味しいんだけど…僕の知ってるオムレツの味じゃない。もっとしょっぱいというか…
お米も、ちゃんと火が通ってるのかな。あんまり生臭い感じはしないけど、それにしてはなんか甘いような…?噛めば噛むほど甘味が増して、けどしょっぱさもあって、なんだか面白い。
あとこの、多分人参だと思うのだけれど。こっちも米と同じ。柔らかいけど、歯応えがある感じじゃない。グリーンピースも…スプーンで潰してみたら、中身は赤じゃなくて、緑のままだった。
「……うーん?」
この国の特産品、みたいなものなのかしら。
僕は首を傾げながら、不思議な食事に舌鼓を打ち続けた。
**
一寸だけ夢主くんの故郷の世界観について解説。
彼の世界、なんと野菜がありません。厳密に言うとモンスターしかいないので、野菜もモンスターです。生き物です。人間の世界で言う家畜の様なものになりますね。
故に彼は肉の味しか知りません。
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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います!多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン?なの初めて見ました!めちゃくちゃおもろいです!応援しとります!頑張ってください! (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノ | 作成日時:2022年9月14日 1時