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『お姉さん…怪我してるの?』
そう尋ねると彼女は、黙ったままだった。もしかすると喋れないほどの大怪我なのかもしれない…そう思い、私は絆創膏を渡した。
今思えば、あれは彼女の血ではなく、祖父の血だったのかもしれない。でも、幼い私は医師である祖父がよく言っていた言葉を守るためにその絆創膏を渡したのだと思う。
『おじいちゃんが言ってたんだ。怪我してる人を助けるのが医者の仕事だって!医師は人を助けるのに理由なんか存在しないって!』
傷口が塞ぎきれない小さな絆創膏を彼女に渡すと、彼女は優しく微笑み
「Thank you…little engel (ありがとう…小さな天使さん)」
そして滑らかな日本語で言葉を紡ぐ。
「ここは、もうじき貴方に相応しくない場所になるわ…早く逃げなさい…」
『わかった!じゃあ、おじいちゃんを起こしてから行くよ!』
すると彼女は、切なそうな顔をして言った。
「わかったわ…じゃあ、最後に…貴方の名前を教えてくれる?」
『仁礼 Aだよ!』
私は、笑って言った。私は、お姉さんは?どこから来たの?と尋ねると、女性はこう言った。
「A secret makes a woman woman 」
と…。そして、大きな声をあげて彼女は言う。
「There is no one else but him!Time to wrap it up!!(ここには、彼以外誰もいないわ!撤収するわよ!!)」
もともと祖父も私と話す時は、いつも日本語だったため、彼女の早い英語をとっさに訳すことが出来なかった。
彼女は、私の頭を撫でると、暗闇の中に消えて行った。
「…奴…らは…行った…のか…」
『おじいちゃん!目を覚ましたのね!あのね…』
「よく聞け…A…この鍵を使って…一階の金庫を開けて、ダストシュートに入りこの場を離れるんだ…」
『おじいちゃんは…?おじいちゃんも一緒に行くんだよね?』
「いや…俺は…少し休んでから行く。必ず追いつくから、A…お前だけで行くんだ。」
わかったな?と言っておじいちゃんは、私の頭を撫でた。聞き分けが良かった私は、大きく頷いておじいちゃんから金庫の鍵をもらい、金庫を開けてダストシュートに入り出た。
外に出て、家を見ると…
燃えていた。
『あ…うそ…おじいちゃん…!おじいちゃん…!!いやああああああ!!!!』
燃え盛る炎とともに、私の記憶は消えていった。
消失していく…祖父と過ごした家とともに…
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るぅた(プロフ) - この作品とっても面白いですo(`ω´ )oちなみにですが、「緑川唯」はファンがガンダムのヒイロ・ユイとスコッチとユイの声優の緑川光さんからとって作った名前で、「諸伏景光」が本名らしいですよ! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 54ac1ac5aa (このIDを非表示/違反報告)
悠吏(プロフ) - めっちゃ面白いです(*´ω`*)なんか番外編的なの期待して待ってます('ω')それとイメ画の事ですけど、あれは描かれたものじゃないですよw (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3914a01dac (このIDを非表示/違反報告)
(・∀・)ケタケタケタ - メッチャ面白かったです!! (2018年5月23日 20時) (レス) id: 65d2e31131 (このIDを非表示/違反報告)
レリア(黒赤蓮梨)(プロフ) - cherryさん» 全然大丈夫ですよ!これからよろしくお願いします♪ (2018年1月20日 21時) (レス) id: 4816739c93 (このIDを非表示/違反報告)
cherry(プロフ) - レリア(黒赤蓮梨)さん» ありがとうございます!フォロリク送りました!遅くなってすみません… (2018年1月20日 20時) (レス) id: 84049ed362 (このIDを非表示/違反報告)
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