【赤羽業】ご主人様とイヌ 3

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『あれ？』





あっという間に放課後になった


会議室に入って指定の席に着き、私はペンケースを出そうとしていた


いつも鞄の上の方に入れているから、ファスナーを引いたらすぐに出てくるのに……





無い！





仕方が無いので鞄の底に手を突っ込んで、隅から隅まで手探りで縦長のシルエットを探す





うーん、やっぱり無いな。どこに行ったんだろう





「A」


そうしていると突如入り口の方から浅野くんの声がした


私は手を止める





『あ！浅野くん。こんにちワン』


「今日はラジオの収録日じゃ無いぞ」


『アハハッ。分かってますよ。今日は校外学習の仕事の振り分けをするんですよね？』


「あぁ、そうだ。ついでに冗談を言えるくらい元気になったんだな」


『お陰様ですっ！約束通り今の私ニッコニコです』




そう笑いながら自身を指さすと、彼はズイッと近付いてきた


そうして私の頭に優しく手を置く





「その方がずっと君らしいよ」





ゆっくりとした時間が流れる


気が付いたら見とれてしまっていて、慌てて我に返った





『あ、あああありがとうございます！スマイル大事にしますね！』


「どうした？そんなに目を見開いて。何か驚く事でもあったか？」


『ちょ、ちょっと確認ですけど私達ってカップル終わってますよね？』


「さぁな」


『否定してくれよ！』





この間のカップル(仮)の時のような甘い台詞にボーッとしてしまった


まだ続いてるんじゃないかって、錯覚する所だった





今のって演技なの？本心なの？





たまに浅野くんが分からなくなる





「さてと、そろそろ会議を始めようか。皆メモの準備をしてくれ」





彼はそう言って大きなスクリーン画面の前に立った


私は納得がいかないまま渋々鞄からペンケースを出そうとして、手を止めた





『あ』


そうだった。筆箱持ってないんだった





＊





「全く。君はやる気があるのか？」


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』





浅野くんにメモを取る一式を借りようと、壇上に向かったんだけど……今そこで説教喰らってます





「そもそも学校に筆箱を持ってこない事がおかしいとは思わないか。お前は勉強する気も無いんだな」


『違いますよ！数学の授業まであったのに！』


「それなら何故無いんだ？」


『分かりません！唯一、心当たりがあるなら鞄ひっくり返したことくらいです！』


「確実にそれだな」

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