【赤羽業】ご主人様とイヌ 3

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『浅野くん！体操着ありがとうございました！』





……と言いに来たつもりだったが


おかしい。教室に彼の姿が見当たらないのである





大体彼が教室に居る時は自身の席でパソコンをカタカタしているか


五英傑さん達で固まっているか、とにかく目立つから視界に入る筈なのに何処にも生徒会長の影がない


困ったな、と教室の入り口で立ち往生していると私はもう一人の知人を見付けた





『あ！さか何とかく「榊原蓮だよ」





そうそう！確かそんな名前だったよね！


……彼なら、浅野くんの行方知ってるかな？





「Aさん。浅野くんに何か用事かい？」


『おおお！ビンゴビンゴ！さか何とかくんって私の思考が読めるんですね！』


「僕はあと何回、自己紹介をすればいいかな？」


『ごめんなさい。その呼び方が定着してきちゃったんですよ。あ、予測変換で出るようにもなったよ！』


「聞いてない」





タイピングの頻度が上がったって事は、出演回数が増えたって事なのに


もっと素直に喜べよ〜！(うざい)





＊





榊原くん(覚えた)によると、浅野くんは生徒会室で生徒会執行部のお仕事をしているらしい


つまり、この時間に体操着を直接渡す事は難しいって事だ





次の休み時間に来てもいいけど、体育がこの後にあるならなるべく早く返す方がいいだろう


私は体操着に置き手紙を添えることにした


文章は【貸してくれてありがとう！刺繍切り刻まれずに済んで良かったね】と簡潔にしておいた





……これで私の言いたい事は伝わるはず





そうやって用事を済ませて自分の教室に帰ると、既に先生が教室に入って来ていて教科書の準備を慌てて行う


そう机に手を突っ込んだ時、違和と言うか異物を手が感じ取った





……何だこれ？





疑問に思いながら、机の中身を思いっ切り引き出すとうじゃうじゃと虫が大量に出てきた





『ぎゃぁあぁぁぁぁ！』





なんて古典的な嫌がらせ！


ゴキブリにムカデに、バッタの類だったり……極め付けにはサソリまでいらっしゃる





こんなのどこで捕まえて来たの！サソリとか砂漠にでも行ったの？


まじまじとそれらを凝視すると、一歩も動いていないのであれ？と不思議に思った





『何これ……オモチャ？』


今までの嫌がらせからしたら、レベル低いね伊久留ちゃん





そう彼女を見ると、微動だにしてなかった


その代わりに隣の席から笑い声が聞こえてくる





……お前かよ！

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