佰陸 ページ11
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花が生けてある花瓶の水を差し替えようと、早朝に華ノ衣は教室の窓付近で一人、作業をしていた。
サンライズの光が片側の頬を照らして、無意識の内にその側の瞳孔が少し小さくなっており、彼女は陽の光をやっかみながら黙々と花の世話を続けていた。
「おはよう」
突如、何者かによって教室の扉が開かれ彼女は少し驚いた。
その声の主がいつもと打って変わってトーンが下がり気味になっていて華ノ衣は背面を向けたまま茅野さんかしら?と尋ねる。
「そうだよ」
『こんな早朝に何のご用?』
「華ノ衣さんが早朝に学校の清掃してるって聞いてね」
『貴方、本当に私が償いを全うしているか監視でもしに来たの?』
「私そこまで言って無いよ」
だったら一体何の為に、と言い掛けて横に立っている茅野を見れば、彼女は髪を下ろしていて、風に吹かれている所から
普段抱いている明るくて元気いっぱいな彼女の印象の面影がそこには無かった。
まるで別の人格が憑いてるようで、華ノ衣は自分のボロが出ないように表情筋をリラックスさせた。
「ねぇ、華ノ衣さんの秘密教えてよ」
『それはこの間話したでしょう』
「あれで全部じゃ無いよね?」
『全部……「嘘吐き」
全部よ、と言い切る前に華ノ衣に被せるように目の前の緑髪の女は話を遮って、微笑んでいた。なんて薄気味悪い女。
「今、演技したよね」
『どこにそんな根拠があるの?』
「ごめんね。私その分野に詳しいから嫌でも分かっちゃうんだ」
茅野はそう言って彼女の指先を凝視する。
「まず作業の手が止まってる。人って嘘を付く時、顔に神経を集中させがちなんだ。だから脳からの伝達が遠い指先には中々回せないんだよね」
『ふぅん。貴方、嫌な所見てるわね』
「それだけじゃないよ。私を凝視して瞬きを一回もしなかったのも騙してやろうって気持ちがどこか心の奥底にあるからだしね」
『フフッ。素晴らしい観察眼だ事。鋭い人間は嫌いだわ』
「私達に何を隠してるの?E組に落ちた理由、全部話すって約束だよね?」
これ以上は騙し通せないと踏んだ華ノ衣は花瓶を机の上に置いて落ちた理由は三つ程あるの、と茅野に近寄って行く。
「一つはカンニングだっけ?」
『えぇ。もう一つは信書開封罪よ』
「最後の理由は?」
宍戸先生とこういう事したの、と彼女は茅野の唇を塞いだ。
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ハバネロ(プロフ) - うさぎさん» 私も好きです!!(*´-`*) 練りに練ってめちゃくちゃ頭使っている小説なので、褒めて貰えてお涙チョチョギレです!どうぞ最後まで楽しんで行って下さいませ。 (2020年4月3日 0時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ - 好きです!!!!!最近のお話はますますおもしろくなってきて、更新が凄く楽しみです。これからも応援しています! (2020年4月2日 23時) (レス) id: d0074b3142 (このIDを非表示/違反報告)
ハバネロ(プロフ) - 偽善少女さん» コメントありがとうございます!^^ いよいよこのお話も佳境に入って来ました!最後まで見届けて頂けるととても嬉しいです! (2020年3月25日 0時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
偽善少女(プロフ) - すごく面白いです!!次のお話が楽しみです!頑張ってください! (2020年3月24日 3時) (レス) id: 04840ecaec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハバネロ | 作成日時:2020年2月4日 19時