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認めたくない ページ1

私には兄がいる。


兄は天才だった。

圧倒的勝者のオーラ、恵まれた運動能力、類い希なるセンス。



それに引き換え、私は凡人だった。

オーラもなければ、運動能力だって高くない。
ただ普通の人間だった。


兄に追いつきたい。


だから、努力した。

運動も、勉強も、死ぬ気でやった。


けれど、それが報われることはなく
私は一度として兄に勝ったことがない。


それでもよかった。


だって兄は自慢の兄だったから。

「お兄ちゃん」

そう呼べば、いつもの仏頂面で振り向いて
けれど、何処か優しい顔で

「なんだ」

そう言ってくれる。

それが何よりも嬉しかった。


そして、私も兄と同様に必要な子なのだと思っていた。


けど、現実は違った。


そう気付かされたのは、母と父が離婚した時だった。

お母さんとお父さんが離婚したとき、選ばれたのは兄で
私は要らないものとして、父に預けられることになった。

その父も海外に行くことになり、結局私は父方の母に預けられることになったのだ。



その時、分かってしまったのだ。

みんながみていたのは、自分ではなく「牛島若利」という兄の存在だったということに。

そして、私は兄のおまけだった。

私は要らない子だった。


その日から、私は兄のことが大嫌いになった。

逆恨みかもしれない。でも嫌いなのだ。



それからは、あんなに大好きで熱心にやっていたバレーもやめた。

みんなからは、「あんなにバレーが好きで頑張っていたのに」といわれたが
未練は全くなかった。


今、考えると、私がバレーを熱心にやっていたのは
バレーが好きだったからじゃなくて、兄と同じものがやりたかったという
その思いだけだったのではないかと思い、気分が悪い。








兄は天才だ。


それは認める。認めるしかない現実だ。



そして、私は天才ではない。どれだけ努力したって私は天才にはなれない。

それも認めよう。




でも、ただ一つだけ認めれない・・・認めたくないものがあった。

どれだけ性格が悪いと言われようと、逆恨みだと言われようと
そんなことはどうでもいい。

だって認めたくないのだから。




ただ一つ。






牛島若利の妹だということを、私は認めたくない。

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ふじもん(プロフ) - 初めて見ましたがとても素敵な作品です!更新待ってます! (2018年9月3日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
京夜(プロフ) - 二口(妹)さん» ありがとうございます!頑張ります! (2017年8月9日 22時) (レス) id: 4b153081bb (このIDを非表示/違反報告)
二口(妹) - 面白いです(*^▽^*)更新がんばってくださいっ。 (2017年8月9日 14時) (レス) id: bdcb30f6f4 (このIDを非表示/違反報告)
京夜(プロフ) - 夢月さん» いえいえ (2017年1月17日 23時) (レス) id: 4b153081bb (このIDを非表示/違反報告)
夢月(プロフ) - おーなっとくです。ありがとうございます (2017年1月17日 23時) (レス) id: 4c66e0d8a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:京夜 | 作成日時:2017年1月3日 18時

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