壱 ページ4
カスガイガラスの伝令で那田蜘蛛山へ向かった。
遺体を避けて通り、目の前の鬼には容赦なく刃を振るい、頸を斬っていく。
今日もまた頭痛がする。
もう随分と鬼の首を斬るのには慣れてしまったが、死体を見るのには慣れない。
隠しが救助を行っている隣をAが通ると、話し声が聞こえてくる。
「煉獄さんだ。」
「え?柱の?男じゃなかったのかよ」
「馬鹿。双子の妹の方だよ。
冷淡な人で鬼だけじゃなくて人に対しても対しても慈悲がないって有名だぞ。
稽古を付けてもらってた隊士が1時間で辞めたって…。」
全部、聞こえてる。悪口は慣れっ子だけれども言われるとやっぱり傷つく。
ただ鬼を斬って、斬って。
鬼の血飛沫の音で陰口なんてかき消した。
一番私の事が嫌いなのは私の方だ。
お前達に言われなくてもわかっている。
*
鬼を狩る途中で蟲柱の胡蝶しのぶと出くわした。
彼女は鬼の首を斬らずに毒で鬼を殺す蟲の呼吸を使う剣士だ。
胡「あら、Aさん。お久しぶりですね。」
貴『胡蝶さん…。お久しぶりです。』
こんな戦場の中にいても彼女は貼り付けた笑顔を絶やさない。
それでも私なんかよりずっとましだ。
胡「相変わらずですね。今度お茶でもどうです?」
貴『遠慮…しておきます。』
そう言って音もなく刹那に去った。
私の悪い癖だ。良くしてくれる人に対しても冷たくしてしまう事。
鬼の気配が濃くなった所でAは隠が入れない危険な場所で怪我を負った隊士、亡くなった隊士の手当をした。
「あの…ありがとうございます。」
貴『礼は要らない。怪我をしなくなるぐらい強くならなければいずれ命を落とす。』
手当をした後去ると同時に小さな声で聞こえた。
「……平隊士に言われなくてもわかってるっつーの…」
これでいいんだと自分に言い聞かせる。
冷たくなっていく自分に気づかないまま。
753人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明朱(プロフ) - シャリファさん» 観賞用のみでしたら、可能です!転載などは不可です、ごめんなさい! (2022年10月15日 1時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
シャリファ(プロフ) - 初コメ失礼します!作品とても感動いたしました!絵めっちゃ上手ですね!見るだけなので保存してもよろしいでしょうか? (2022年10月14日 22時) (レス) @page42 id: d94d66ff3c (このIDを非表示/違反報告)
明朱(プロフ) - まゆゆさん» ありがとうございます!笑笑楽しんでいただけてよかったです! (2021年7月30日 0時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆ(プロフ) - 作者様に泣かされたぁぁぁぁぁ(泣)良い話過ぎる! (2021年6月19日 1時) (レス) id: b7969430ca (このIDを非表示/違反報告)
明朱(プロフ) - 猫築かなめさん» そんなに言って貰えると本当に嬉しいです。作品作り、頑張ってください! (2020年8月21日 1時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:明朱 | 作成日時:2019年10月2日 20時