弍 ページ17
泣いた顔を見られたくないから、顔を手で覆って畳に座り込む。
杏寿郎は下を向いて、Aに近寄った。
貴『なに』
泣きながら、睨みながら杏寿郎の方を見上げる。
すると、頭を掴まれ、畳に押し付けられた。それも、思いっきり。
あんなに優しい杏寿郎がこんなことするなんて思わなかった。
杏「生まれて来なければよかったなんて二度というな!!
今すぐ母上に謝罪しろ!!!」
怒った顔を見たのも初めてだった。
いつも笑顔だった杏寿郎が般若のような顔をして怒っていた。
杏「俺はAと共に生まれ、共に育った事を一度も不幸だなんて思ったことは無い!!
比べ物にするやつなど気にするな!!
俺とお前は違う。
陰口など聞かぬ振りをすればいい!!
聞こえない悪口は言われてないのと同じだ!!
だから二度と生まれて来なければよかったなんて言うな!!!」
私はそっと顔を上げると、杏寿郎はそっと抱きしめてくれた。
その時、昔の事を思い出した。
*
私は母の寝床の隣に正座していた。
貴『母上、私はなんでこんなに弱いのでしょうか…。
私は、杏寿郎のようにどうして出来ないんでしょうか…。
なぜ、私は生まれて来てしまったのでしょうか…』
母は黙って私を抱き寄せた。
瑠「A。私は貴方が生まれて来てくれただけでいいのです。
弱くてもいい。けれど、弱いなりに足掻いてみなさい。
だから、二度と生まれて来なければよかったとは思わないでほしい。」
瞳に涙が溢れ、こぼれ落ちた。
*
貴『ごめん…。
ごめんなさい
ごめんなさい!母上、兄上…!』
杏寿郎に抱きしめられながら子供の頃のように泣きじゃくった。
あの時、母が私を抱き締めてくれたように、杏寿郎は私を抱き締めた。
753人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明朱(プロフ) - シャリファさん» 観賞用のみでしたら、可能です!転載などは不可です、ごめんなさい! (2022年10月15日 1時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
シャリファ(プロフ) - 初コメ失礼します!作品とても感動いたしました!絵めっちゃ上手ですね!見るだけなので保存してもよろしいでしょうか? (2022年10月14日 22時) (レス) @page42 id: d94d66ff3c (このIDを非表示/違反報告)
明朱(プロフ) - まゆゆさん» ありがとうございます!笑笑楽しんでいただけてよかったです! (2021年7月30日 0時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆ(プロフ) - 作者様に泣かされたぁぁぁぁぁ(泣)良い話過ぎる! (2021年6月19日 1時) (レス) id: b7969430ca (このIDを非表示/違反報告)
明朱(プロフ) - 猫築かなめさん» そんなに言って貰えると本当に嬉しいです。作品作り、頑張ってください! (2020年8月21日 1時) (レス) id: 7877c5d22d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:明朱 | 作成日時:2019年10月2日 20時