水柱の恋愛事情【冨岡義勇】 (ページ14)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:23,478 hit

拾参ページ14

・Aside

冨岡さんは、表情は変わらないけど驚いているんだろうな。
その証拠に、私の顔をじっと見てくる。

「…でも、好きだから…傍にいたくない」

いつ死んでしまうかわからない、お互いに。
好きだって自覚したって、ずっと一緒にいられる確証はない。

「これ以上、仲間が…大切な人がいなくなるのは嫌なんです」

冨岡さんだってわかるでしょう？
そう問いかけると、冨岡さんは目を伏せた。

今まで何人もの人たちの命の灯火が消えていった。
これ以上好きになってしまうと、その時の悲しみが大きくなる。

「だから私は、傍にいたくないんです。冨岡さんへのこの気持ちを断ち切っても消してしまいたい」

「…それでも俺はAの傍にいたい」

冨岡さんの表情は変わらない。だけど声は今までよりも圧を感じる。
怒鳴った訳では無い、怒っている訳では無い。
それでも、何故かぴりぴりと圧を感じて言葉を返せない。

「いつ死ぬかもわからないのに。傍にいてもなにも意味ないですよ…」

冨岡さんがそんなことを思う人じゃないとはわかってる。
それでも、こんな言葉を投げかけてしまうのは。

それはきっと、自分が傷つきたくないから。
冨岡さんに傷ついて欲しくないから。

冨岡さん、私が怪我をして眠っていた時に呟いてました。
「錆兎…蔦子姉さん…」と。
何故か聞こえてきたその声は、弱々しい初めて聞いた冨岡さんの声。

あんなの、もう聞きたくない。そう思わせたくないから。

「意味なら、ある」