水柱の恋愛事情【冨岡義勇】 (ページ13)

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拾弐ページ13

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来て欲しいと言われたところに訪れると、既にAはそこにいた。
月の明かりしかない今夜。Aはいつもより綺麗だった。

「…A」

「あ、冨岡さん」

俺に気づいたAは目を細めて微笑んだ。
そんな嬉しそうに笑わないで欲しい。
同じ気持ちなんじゃないかって、勘違いをしてしまう。

「ごめんなさい、わざわざここまで」

「いい。俺も話したかった」

Aの隣に腰をかける。
隣では鈴を転がすような声でAが笑う。
このお互いに無言の時間も、今はすごく心地いい。

「そういえば、私を蝶屋敷まで必死に運んでくれてありがとうございます」

「…どうして知ってる」

「炭治郎くんから聞きました。ずっと傍にもいてくれたと」

気を遣わせるのではないか、そう思って言っていなかった。
それでもAは、なんで教えてくれないんですか、と頬をぷくっと膨らませた。

「どうして、必死に。どうして、傍にいてくれたんですか？」

Aのその目は、一体どんな顔なのだろうか。
ただ上を見て、声だけを俺に向けている。

「…Aのことが好きだからだ」

すっ、と声にした言葉。
確かに理由はその通りだ。だが、あまりに自然と声になるので自分でも少し驚いている。

「…いつでも人の為に、他人のことを優先してしまうお人好し。そんなところが、好きだ」

「…私もですよ」

そんな言葉が聞こえて顔を上げ、Aの方を見る。
月の淡い光に照らさせている彼女の顔は、幸せそうな、辛そうな顔だった。

「私も冨岡さんが好きです」