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Jin side
「来てくれてありがとう。ごめんね、急で。」
その日最初の一言は感謝だった。
彼女との約束に突然来れなくなったユンギの埋め合わせに俺が選ばれたからだ。
昨日の夜、
突然ユンギからの連絡で頼まれて来た。
「いや、むしろ楽しみでした。」
その約束は、
あるヒップポップアーティストのライブだった。
俺は特別そのアーティストを好きなわけでなく、
何なら初めて知ったぐらいで
楽しみというのは嘘でしかなかったが、
2人は出会う前から好きだったようだ。
ああ、趣味があったんだと
好きになった理由の一つがわかった。
ライブ中も、
俺は馴染みのない場所、聞いたことがない曲のため
上手く反応が出来ずにいたが、
隣にいる彼女は終始楽しそうで、
俺はその表情に惹きつけられるように
何度も彼女の方を見た。
公演が終わって、
俺たちは駅に向かう途中にあったラーメン屋にいた。
彼女が行きたそうに見ていたから、
行こう、と誘ったからだった。
美味しい、と麺を啜って
替え玉までお願いする彼女は
多分誰が見ても無邪気で少女のように思えた。
「ユンギからジンくんはお喋りって聞いてたんだけど、意外と話さないよね。」
それ緊張からです。と思いながら、
俺は、そうですか？なんてとぼけてみせた。
「私と何話していいかわかんない？」
「いや、別にそういうことじゃなくて…」
「そう？結構見てくるのに話しかけてこないから、わかんないのかなって」
「え、、あ、なんかごめんなさい、」
見ていたことに気づかれていたのが恥ずかしくて、
指摘されて思わず謝ってしまった。
そんな俺に彼女は軽く笑って、
「謝らないでよ、仲良くなろっ」
と、俺を知りたいなんて期待させる一言を発した。
距離感が近いのに、
決して下品でも軽くもない彼女に
俺はもうこの時には心底惚れていた。
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作者名：L | 作成日時：2021年10月21日 0時
