聲の形

連帯責任って言葉を、知っていますか。 ページ6

『西宮さんのお母さんから電話がありました。
西宮さんの補聴器が、この五ヶ月で八個も紛失。

…または、故障している。

___学校で、いじめられているのではないかと。』


待ちに待っていたその日は、意外にもすぐにやってきた。


心苦しそうに話を続ける教頭に、大して然程変わらない表情のままの担任教師。
しん、と静まり返る教室。

『__もし、この中で西宮さんに対するいじめや…。

それに近い、嫌がらせを目撃した人は居ませんか。』


補聴器は、一つ一つがとても高価なもの。
これ以上、親に迷惑がかかる前に__。

『石田。』

『……えっ！？』

教頭の言葉を遮るようにして、担任が声を上げる。
自ら手を上げようとしていた彼は、驚愕の声を紡いでいた。

『なぁ、お前だろうが。

……早く立てよオラｧｯ!!!』


突如として利き手で黒板を殴った教師の荒げた声に、クラスメイトは息を飲む。
それもそうだ、普段干渉しない大人が急に声を荒げたら。子供は怖いに決まっている。


立ち上がった彼の"罪"を立証させるため、教師は植野や島田に問いかける。

"隣で見てて、どうだった？"

"島田は？"



勿論彼女らが真実を話す事もなく。
疑問に感じた彼は責を彼女らに問う。


けれど誰も、その問いに応じることはない。



やっぱり、こうなっちゃうのか。
私は、満を持して手を上げる。






『先生、良いですか？』

同じ穴の狢。→←知らないフリは、"違う"から。

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