7 ページ7
「………えっ」
「あ、いや、嫌かな、やっぱり」
「か…っ、帰る！一緒に！」
「！…うん！」
帰りませんか、なんて久しぶりに言われた。胸がぎゅう、と握られるような感覚。これも久しぶり。
顔はまだほんのり赤いけど、嬉しそうな顔をする佐久間くんを見ると、泣いていたことも泡になって消えそう。
「わー、すごい水溜りだね」
「靴の中入ってきちゃうね」
「ほんとだ、避けて帰ろう！」
「…ふふ、」
「どうしたの？」
「ううん、佐久間くん雨の日誰よりも楽しんでそう」
「あはは、そうかも！」
ばしゃばしゃと少し先を小走りする佐久間くんはちょっと眩しい。雨の日なのに、晴れている気がしてならない。
「あ、見て、カエルだよ」
「……うーん…それはちょっと…」
「あれ、嫌いだった！？ごめんね…！」
「あ、いや、違うよ、苦手ってだけで」
「そっかぁ、カエル、可愛いと思うんだけどな」
「……」
佐久間くんは喜怒哀楽がはっきりしている、というか感情が真っ先に顔に出てきているタイプで、しょんぼりしていたりするととても分かりやすい。
あまりにも眉が下がる佐久間くんを見ると心が痛くなって、ついカエルへの気持ちを嫌いから苦手にしてしまった。
「げこげこ〜、……なんちゃって」
「…！！！」
あまりにも、あまりにも、あ、あ、あまりにも可愛いんじゃないか、この生き物。
衝撃を受けた。何か重たいもので頭を殴られたくらいの衝撃。嘘、こんな可愛い男子高校生いるんだ。
「佐久間くん………」
「…流石に痛いかな、あはは…」
「いや………ど、ドンズバ……」
「どん…？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいや | 作成日時：2018年7月6日 23時
