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「……」
「…ごめん佐久間くん、気使ってるでしょ、ごめんね」
「え！？あ、大丈夫…！」
多分私があんなに泣いてた理由を知りたいんだと思う。けれど、佐久間くんの性格だから聞くに聞けないのだろう。聞いてくれてもいいんだよ、むしろ聞いてもらった方が楽になる場合だってある。
「彼氏とね、別れちゃったんだ」
「へ、」
「1年と半年」
「そうなんだ…」
「向こうが浮気してて…一気に嫌いになっちゃった」
「う、浮気！？まだ大人でもないのに…！」
「…大人…あは、そうだね。まだ子供なのに格好つけて浮気なんかしちゃってさぁ」
「そうだよ！ダメだよ！」
顔を少し赤くして、焦ったようにそう言う佐久間くん。恋愛には慣れてないのだろうか。ちょっと可愛い。
「色々考えてたら大泣きしちゃって、そこに佐久間くん登場」
「あはは…ごめん、廊下まで泣き声聞こえてたからつい」
「そんなおっきな声だった…？」
頑張って声を出さないように泣いていたはずだけど、やはり涙というのは自分で制御できるようなものじゃない。
「佐久間くんは帰らないの？」
「うん、今から帰ろうかな」
「じゃあ、また明日だね」
「桃野さんは？」
「…傘忘れたから……」
「………」
いきなり自分のカバンを漁りだす佐久間くんにびっくりする。どうしたどうした、無言だと少し怖い。
「これ、使って！」
「えっ」
「俺の折り畳み傘！」
「で、でもそれじゃ佐久間くんが」
「俺普通の傘も持ってきてるんだ、真澄くんがよく忘れちゃうから…」
「…そうなんだ」
真澄くんというのは、うちの学校では人気でファンクラブまであるのにそれに一切興味を示さないモテ男である。クールで格好良いイメージがあるが、私のタイプではない。
「意外だな〜、仲良しなんだ」
「うん、朝も一緒に来てるよ」
「へー…」
苗字は碓氷だったと思う。碓氷くんより笑顔の可愛いキュート属性の佐久間くんの方が好きだ。
「傘、借りるね。ありがとう」
「またいつでも言ってね！」
「うん」
そう言って、教室を出ようとする佐久間くんの後ろ姿を見た。湿気のせいか、髪の毛がいつもよりいろんな方向にはねている気がする。
「……あ、あの、桃野さん」
「ん？」
「…今日は真澄くんも先に帰っちゃったんだけど」
「そうなの？」
「一緒に、帰りませんか…？」
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作者名：さいや | 作成日時：2018年7月6日 23時
