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「上機嫌だね〜、傘忘れてるんじゃなかったの〜?」
「もう濡れて帰っても許せる、今の私は仏」
「すご、更生したの?はいお賽銭〜」
「なんで私がアイツより悪いみたいになってるのえりちゃん、まぁ悪いことをしようとしたのには変わりないんだけど」
あはは〜と笑いながらえりちゃんはお賽銭代わりに板チョコを折って1列くれた。美味しい。
「私見てたんだからね〜、Aがもう他の男子とちょっとイチャついてたの」
「違う、佐久間くんはそんなんじゃない、あの子は穢しちゃいけない、やめて」
「佐久間信者か〜」
「佐久間くんのピュアさ知ってる?すごいよあの子は、本当にすごい」
「知ってるよ、この前なんかヤンキーっぽい人にピアス自慢されててかっこいー!って言ってた〜」
「良い子……………」
「だよね〜、てか私用事あるから先帰るけど、Aどうすんの〜?」
「もうちょっと雨ゆるくなるまで待ってるよ」
「分かった、んじゃまた明日ね〜」
「は〜い」
えりちゃんはこの後彼氏とデートがあるのだそう。今は気を利かせて用事って言ってくれてたけれど、だいぶ前に私にデートするんだ〜って自慢してきてた。分かってるよえりちゃん、存分に楽しんで来なさい。
「はぁ…」
1人になった教室で、なんとなくため息をつく。いかん、幸せが逃げる。…今はいいか。
雨がゆるくなるまで待つとは言ったものの、スマホで天気を調べてみるもこれからの降水確率は80%だったり70%だったり、それからまた80%に戻っていたりしている。
いつかは帰りたいけれど、なんだか面倒くさい。
そうだ、スマホのフォルダから穢れた存在(元カレ)の写真を全部消しておこう。そうすれば良い時間になるはず。
「…うわっ」
物凄いスピードで消していると、キスをしているプリクラが発掘された。鳥肌が立った。どうして人は付き合うとこうも調子に乗ってしまうんだろうか。やめた方が良いと思う。
「…」
それにしても多い。確かに、1年と半年分の量なのだからそれなりにはあるだろう。
好きだった、本当に好きだった。だけどあんなシーン見てしまったら、ねえ。
「ね〜え〜、今日家来ない?雨だし〜、」
「マジで?どうしよっかな」
泣きそうになる私が教室にいることも知らずに、元カレと浮気相手であろう人の声が廊下から聞こえてきた。
存分にイチャつくが良いわ、もうあの人は私の彼氏じゃない。
「あ、待って。忘れ物してるわ」
「え〜、取りに行こ〜?」
「…えっ」
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作者名:さいや | 作成日時:2018年7月6日 23時