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体育館の隅っこに三角座りをしてボーッとドッジボールをするクラスメイト達を眺める。
さっきの彼は大丈夫なのだろうか。あの後出血多量とかになってないだろうか。
「……何やってんだか〜…」
ぽそ、と呟いたそれは、床にバウンドしたボールの音にかき消される。
昨日は彼氏が浮気してたし、今日はアイツがボールを避けやがったせいで全然関係ない人の顔面に当たっちゃうし、大雨だし、傘忘れたし。
「……………」
視界が滲んで歪んで、自分が泣いていると分かったのは体操服のズボンに涙が染み込んだ瞬間。
泣いているなんてバレたら皆がこっちを見る。嫌だ、伏せてよう。
「…大丈夫？」
「！……あ、えっと…は、鼻、」
「俺は全然大丈夫だよ、俺、速いボール投げられないから羨ましいなあ」
「…………っ、う……」
「！？な、泣いてるの！？もしかして桃野さんもどこか怪我して…」
「ううん、してないよ、大丈夫…」
あんなに酷いことをしたのに、羨ましいなんて言葉が返ってくるなんて思ってもいなかった。
その優しさと純粋さに、思わず涙腺が崩壊しかける。
「良かった、女の子の怪我の方が跡残ったりすると嫌だもんね」
「…佐久間くん、本当に優しいね」
「あはは、そうかな」
「ティッシュとか、つめなくて大丈夫なの？」
「うん、もう完全に止まったみたい！俺戻るね！」
「あ、うん」
そう言って眩しい笑顔を見せた佐久間くんは、なんかこう、お花のような、パッとした感じで、私の気分まで少し明るくしてくれた気がする。
「あ、桃野さん」
「？」
「髪切ったの、似合ってるよ！」
「………は、」
それ、今言う？と頭の中でそう言うけれど、口はだんだんニヤてけくる。嫌だ、気持ち悪い。
元カレときっぱり別れた印に、よくある失恋したら髪を切るってやつをした。
今まで伸ばしてきた長くて巻いた髪を切られるのはつらかったけれど、…いや、あの時は怒りに任せていたからそんなにつらくなかったかもしれない。
「………切って良かったかな」
毛先を指でくるくるさせた。
学生の心はまだ単純で、ご機嫌だってのが丸見えだ。
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作者名：さいや | 作成日時：2018年7月6日 23時
