桃の花言葉【A3!/佐久間咲也】 (ページ20)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:3,004 hit

20 ページ20

「ありかとうございました！」

「ありがとう。また来てね」

会場を出ると、さっきまで舞台上に立っていた人達が同じ場所に立っていた。えっ、こんなん、え、マジ？

「あああ…」

「あはは、大丈夫？ほら佐久間くん立ってるよ」

いつも学校で話していたはずなのに、やけに緊張していて手汗がすごい。ありえない。
いつもと違う格好だから？どうしよう、笑顔がとてつもなく眩しい。

「ありがとうござ…あっ！」

「！わ、わ、」

「えへへ、来てくれたんだね」

「……っ、う、うん…」

いつもと違う役者の佐久間くんが目の前にいる。私を見つけて、気付いてくれた。
役者だから、一般人と親しげに話すのはあまり良くないのだろう。小声で少し話してくれる。

「…か、格好良かった…！」

「！…うん、ありがとう！」

学校でいくらでも話せるのに、役者の佐久間くんとはこれだけしか話せない。
早く進まない時間がとても嫌だと思った。早く明日になれば良いのに。全部、全部伝えてしまいたい。

「明日、話そうね」

「！」

びっくりしすぎて返事ができないまま、手を振ってお別れしてしまった。
色々と考えていたことが飛んでいって、頭が真っ白になってしまった。今日ほど、早く明日が来て欲しいと思ったことは人生で初めてである。

「………嬉しい…」

ぎゅ、と振った手をにぎりしめ、足早に天鵞絨駅へ向かう。
慣れないヒールは歩きにくいどころか、むしろ軽く感じた。