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「桃野さん、昨日カギ拾ったりしなかった?」
「…えっ」
次の日、佐久間くんにそう言われてびっくりする。まさかエスパー?マジで?その容姿で?エグすぎるなんだその設定推すぞ
「太一くんがね、桃野さんみたいな人にカギ拾ってもらったって言ってた!」
「うん、拾った…赤い髪の子と、オレンジと紫」
「わ、じゃあ本当に桃野さんだ!綺麗だったって言ってたよ」
「………いやいや…」
佐久間くんはいつも褒めてくれる。褒められ慣れていないのでどう対応するのが正解なのか分からない。
赤髪の彼らとは友達なのだろうか。だとしたらどこで知り合ったのだろう。あんなに目立つ3人組はこの高校にはいない。…ということは、つまり、
「劇団員!」
「え!?」
「あ、や…劇団員の仲間かなと」
「あはは、びっくりした。そうなんだ、桃野さん名推理だね!」
「…あは、うんうん、そうでしょ」
じゃああの人たちも演技をするのであろう。天馬くんの演技はテレビで見たことがあるけれど、舞台で演じるのとカメラを前にして演じるのとはやはり別なのだろうか。
「服買いに行ってたんだ、その日」
「そうなの?」
「うん」
自分でそう言ってしまったことに、これではまるでどんな服か聞いてほしいみたいじゃないかと後から恥ずかしくなる。もし聞かれても千秋楽に着ていく時の服、なんて言えるわけがない。
「どんな服買ったの?」
「あっ…いや………」
「?」
「………せんしゅうらくの…」
「!観に来てくれる時の!?」
「…うん、ごめん、流石に気合い入りすぎかな…」
「そんなことないよ!期待に答えないと…!」
「…うん、」
佐久間くんのキラキラした目を前にして、嘘なんてつけるわけがなく、正直に答えてしまった。
佐久間くんと関わるようになってから、だんだん弱くなっている気がする。嘘がつけなくなったり、なんていうか、こう、自分で言うのもどうかと思うがツンツンしたところがなくなってきたと思う。
「俺、今すっごく嬉しい!」
「うん、…顔に出てる」
「あはは、そうかなあ」
それもまあ、良いか。
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作者名:さいや | 作成日時:2018年7月6日 23時