58話_ ページ14
夕刻、仕事が終わったAは地下蔵近くの渡りを歩いていた。
「お嬢さんはさ、主が王子じゃなかったら良かったとは思わないのかい?」
見下ろした先にはオビと白雪。
地下蔵からの帰りか、手にはロカの瓶があった。
「返して」
白雪は渡された瓶をギュッと握って
「次言ったら、その時は侮辱ととる」
押し付けた瓶をオビが持ったのを見て歩き出した。そのまま薬室へ歩く2人を見送る。
「……今更、何かできるわけじゃないだろう」
呟きながらAは腰に下がる剣の柄を握っていた。
Aがもつ黒い剣。
特徴的なのは刀身まで黒いこと。
理由はいくつかあるが、主な理由は今からしようとしてることに関わっていた。
____ ___ __ _
空が暗くなってきた。
月明かりさえ届きにくい場所に、黒い服を来て、Aは木の上に身を隠していた。
そろそろだと思うんだけどなぁ
時間的にも、場所的にもこの辺りがベストだと思うんだけどな
ずっと集中してるの疲れるんだけどなぁ
「あ、…きた」
微かな笛の音色を捉えた。
木を伝って移動した先にいる役人の格好をしたそいつ。
認識した瞬間、Aは飛び出した。
「っ!な…」
驚かせる暇なく、腕を押さえつける。
「悪いな、来てもらうよ」
気絶させたストーカー(仮)を抱えて城壁から垂らしておいたロープを掴む。
できるだけ静かに、しかし素早く。
見張り場所(兵士がいないのは知っている)にストーカー(仮)を置いてロープを掴んだまま城外に飛び降りる。
「ちょいとそこ行くお兄さん」
驚愕の顔をする男。
「何しようとしてたんだい?」
気を保ったのだろう男は剣の柄に手を伸ばす。
が、
「な、に…」
男の首にはすでに黒い刀身があてられていた。
「やっと声が聞けたけど、詰めが甘いんじゃないかい?それに、質問に答えてくれないの?……あんたら、何をしようとしてた」
Aの表情は場面に合わず笑っているが、安心できるような顔はしていない。
「答えてくれない。じゃあしょうがないか」
すっと、Aは足を振り上げた。
「寝てろ」
正確には答えられなかったのだが、城壁へと蹴り飛ばされた男は気を失い、近づくAの顔に表情はない。
闇に紛れるための色。
闇で活動するための色。
そのために俺の剣は黒い。
『王族じゃなかったら、あなたは……』
昔から、好んで黒を使っていたのは確かだが。
『A!』
「…もどろう」
言い聞かすように呟き、男を抱えてAは城壁を登り始めた。
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レイ(プロフ) - うさ丸さん» 更新遅くなってすみませんっ!コメントありがとうございます!なかなか続きをかけてないんですが、これは完結まで書きます!まだこういうふうに更新遅くなる日が続くと思いますがこれは書き続けたいと思っていますっ頑張りますっ!本当にありがとうございます!! (2016年5月9日 7時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - え、消しちゃうんすか!? (2016年5月2日 22時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - 続き気になるっすね!更新頑張ってくださいっす! (2016年5月1日 21時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 御月刃さん» コメントもありがとうございます!自分なりにこれからも頑張ります!! (2015年9月13日 8時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
御月刃(プロフ) - 続編おめでとうございます!頑張ってください! (2015年9月12日 16時) (レス) id: 7136332561 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2015年9月9日 12時