さよならの前に２【Juri.T】 (ページ13)

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隠し事ページ13

＿聡said＿

「ほら、一旦落ち着くまでここにいよーぜ！」

多分、教室では麻耶が哲也あたりから説教くらってると思うから、

取り敢えず、安井とここで時間を潰そう。

「そういえば、自己紹介してなかったな！オレ、野口聡って言うんだ！」

そう言って手を差し出せば、さっきまでぶすくれていたのが嘘のようににっこり笑って手を握り返した。

安井「聡か！よろしくな！」

「それにしても、
お前、麻耶に蹴られたとこ大丈夫か？」

安井「ああ！全然大丈夫だよ！こんくらい平気！」

確かに、上手く受けたのか安井に目立った怪我はなかった。

「すげーな！お前って意外と喧嘩強いんだな！」

安井「んー、そうかな？」

「あっちで何かやってたの？」

安井「別に特にやってないけど、やっぱりあっちは治安悪かったりするからねー。
こういうのは自然と身につくもんだよ！」

「へぇ。それでも凄かったよ、お前！」

安井「ありがとな！
…まぁ、教室戻ったらAに怒られるだろうけどね。
『昨日、暴れるなって言ったでしょ？』って。」

そう言って安井は項垂れるけど、

…ん？

「A？」

安井「え、うん」

それに、昨日？

「Aは、転校生が来ること…っていうか転校生がお前だって知ってたのか？」

今思えばAは
転校生が来るってことを知っている様な口ぶりだった。

安井もAのこと知ってたみたいだし。

だから朝少しだけ焦ったんだな。

安井の性格も知ってたから、
会ったらどうなるかくらい予想してたのかもしれない。

もしかしたら、昔の友達なのかも

でもAの友達なんて

悪い意味じゃないけど少し意外だなぁ。

安井「？
当たり前じゃん！
だって俺ら、婚約者だもん。」

そんなふうに考えていたことは、想像を超える安井の言葉によって綺麗に消え去った。

……は？

婚約者？

安井「……A、何も言ってない？」

安井「俺らここ卒業したら結婚するんだよ。」

時間が止まった気がした。

自分の耳を疑った。

それでも安井の言葉だけは警報のように頭の中で何度も繰り返されていた。