風邪 gt ページ2
「あぁ、変わってやりたい」
ベッドで愛しい彼女が苦しそうに眠っている。
こんなにも変わってやりたいと思うのは初めてだ。
温かくなった冷えピタを剥がして新しいものに貼り替える。ぬるくなった氷枕も取り替えて、暑くて退かしてしまったであろう布団を掛け直す。
動画を編集する合間にAの部屋に来ているけど始めよりは良くなってきており安静にすれば治りそうだ。
「早く良くなってな」
おかゆとそれだけでは味気ないかと思って漬物をお盆に載せたけどこのままじゃ食欲はあるだろうか。
薬は飲んでほしいからご飯も食べてほしいけど無理はしてほしくない。
彼女の頭を優しく撫でる。
「…ん、ぐちさん、？」
「悪い。起こしちゃったか」
「んーん、ぐちさんの手、冷たくてきもちーね」
「ん゙、…そう、か。うん、」
こんなときに変なこと考えるな、俺。
「食欲はある？ご飯持ってきたけど」
「あんまり。…ゼリーなら食べられる気する、」
「わかった。ちょっと待ってろ」
おかゆはあとで自分で食べればいいか、とお盆を持ってキッチンに戻る。さっき持って帰ったレジ袋から念の為買ったゼリーを取り出す。
「ぶどうとみかん、どっちがいい？」
「みかん」
「ん」
中の汁が溢れないように蓋をとってスプーンでゼリーを掬う。
「あー」
すんなりと大きく開けられた口にゼリーを入れる。
「…うまい？」
「…うん。おいしーよ」
「良かった。早く良くなってな」
「もしぐちさんに移ってたら今度は私が看病するね」
にへら、と笑う彼女の頭をまた撫でた。
「大丈夫。俺は風邪引かんから」
「そーお？」
また一口ゼリーを掬って彼女の口に入れる。
なんだかこれじゃ彼氏じゃなくてお母さんみたいだ。子供の世話でもしてるよう。いや、犬とかの小動物系でもなんだか当てはまる気がする。
「ぐちさんなにニヤニヤしてんの…？」
「いや、なんでもない」
母性が擽られるような、なんとも言えない気持ちに頬が緩んでいたらしい。
「薬飲んだらまた寝て早く治してな」
「…いっちゃうの？」
「Aが寝るまではここにいるから」
「…わかった」
彼女はさっさと薬を飲むと寝る体制に入る。自分の手を俺の手と繋いで目を瞑ると彼女は思いの外すんなりと寝てしまった。
起きて見た時計を見てサー、と血の気が引いた。
「やっべ、編集終わってねぇ！！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルオ | 作成日時：2023年12月18日 20時
