溶け始めた心【ヒロアカ】 (ページ5)

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五十二話ページ5

『優秀！！優秀なのに拭いきれないその地味さは何だ！ヒーロー科、瀬呂範太！

対

二位、一位と強すぎるよ高嶺の華！同じくヒーロー科、轟焦凍！』

フィールドの四つ角の炎の揺蕩う松明にすら、クソ親父を思い出して舌打ちをする

ひでぇ、と軽口を叩きながら何処か飄々とした雰囲気。真意は読めないが、その目は死んでいない

『START！！！』

「まァーーーー…、勝てる気はしねーんだけど…」

ぐぐ、と伸びをする姿に気を取られていた隙に、体に何重にも巻き付くテープ

「つっても、負ける気もねーーー！！」

地面から足が離れて、後ろへと引きずられる

『場外狙いの早技！この選択はコレ、最善じゃねぇか！？
正直やっちまえ瀬呂ー！！！』

勝ちを確信して盛り上がってるとこ、

「悪いな」

前々から密かに練習していた、私の必殺技

まだ今はこのドームの半分を覆うので精一杯だが、やるなら今ーーーー

キイィィンッ……

瞬く間に氷点下になった会場の温度
呆然と口を開いて静まり返る観客たち

はぁ、と口から出る息が凍る

思ったよりも高く完成した大氷壁を見上げながら、クソ親父を探す

回りの奴らほどの間抜け面は晒していないが、及打点ってとこかな

体に巻き付く氷ったテープをバキン、と振りほどく

「や、やりすぎだろ……」

「瀬呂くん、動ける？」

「動ける筈ないでしょ……痛えぇ…」

「瀬呂くん、行動不能！」

全身中途半端に氷付けにされたらそりゃ痛いよな

「すまねぇ……やりすぎた。イラついてた」

ぺたり、と体に左手を付き、氷を溶かす

自然と沸き起こったドンマイコール

向きになって酷い勝負をしてしまったことを、冷えて多少冷静になった頭で申し訳なく思った

『二回戦進出、轟さんーーー』