16 ページ16
〜 Colon side 〜
僕のパーカーに包まれて、嬉しそうにしている彼女を見ると胸が締め付けられる。
『…せんせ?』
ぼーっとしている僕に疑問を抱いたのか、彼女は不思議そうな顔で呼びかけてきた。
『大丈夫?』
「うん」
ふーん、なんて興味無さそうにそっぽを向く彼女には幼いけどどこか大人っぽい、そんな雰囲気があった。
「榎本はさ、大学に入ったら彼氏つくるの?」
『…わかんない』
そう言いながら、彼女は苦笑いを浮かべた。
「そっか。大学には変な男もいるから気をつけて。」
『そんなに心配するなら先生が彼氏になってくれたらいいのに。』
「…え」
慌てて彼女の方を向いてみると、榎本は赤く染った頬を見られないように、そっぽを向いた。
「榎本は…僕のこと好き?」
『もちろん。』
「恋愛的に?」
思わずそう聞いてしまった。
『…うん』
なんとなくわかっていた答えに少し戸惑う。
榎本の気持ちは普通に嬉しい。
だって僕も榎本のこと…
「僕…は、婚約者いる」
出かけてた2文字を飲み込んで、そう言った。
嗚呼、言うはず無かったのに。
でも、叶わない気持ちを伝えてしまうよりかはこっちの方が得策だった。
『…え』
驚きの中に少し絶望が混じっている彼女の顔をこれ以上見たくなくて、思わず顔を背ける。
『うそ…』
「ほんと」
『だってそんなこと一言も…』
「言うつもりなかったから」
彼女の綺麗な顔が涙で濡れていく。
『せんせ、いの、ばか』
「うん。ごめんね。」
本当は目の前の彼女を抱きしめたかった。
抱きしめて、僕も好きだよって、大好きだよって伝えたかった。
でも、そんなことを伝えたらだめだから。
君と僕は"生徒"と"教師"だから。
「A遅くなってすみません…ってなんで泣いてるんですか」
扉を開ける音と共にそんな声が聞こえる。
どうやら、タイミング悪く、るぅとくんが来てしまった。
『るぅとくん…』
「ころちゃん…」
そう言うと、彼は僕を睨んだ。
「あとで何があったか聞きますから」
『ちが、先生は悪くないの』
「僕が悪いんだ」
『せんせい…』
ほら、榎本にはちゃんと王子様がいるから。
だから、僕じゃなくて彼に幸せにしてもらってよ。
るぅとくんと一緒に去っていく彼女の後ろ姿を見ていると胸がズキリと痛んだ。
216人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千景(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます…曲自体が素敵な歌なので、雰囲気壊しそうで怖いですが、頑張ります!(私自身、ゆゆさんの作品を幾つか拝見させて頂いているので、コメント来た時にすごく驚きました(笑)本当にありがとうございます。) (2020年1月25日 20時) (レス) id: 0f5cbdbd1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - おおおお……曲の雰囲気を壊さずに世界観をぐわーっと広げていてとっても読みやすいです。私の求めていた作品見つけられた気がしてます笑 更新頑張ってください〜! (2020年1月25日 10時) (レス) id: 1ae9e757ea (このIDを非表示/違反報告)
RIKO(プロフ) - 千景さん» いえいえ、!これからも応援してます…! (2020年1月20日 19時) (レス) id: 2f1eb9db7f (このIDを非表示/違反報告)
千景(プロフ) - RIKOさん» そう言って頂けて嬉しいです…!!ありがとうございます。 (2020年1月20日 17時) (レス) id: 0f5cbdbd1f (このIDを非表示/違反報告)
RIKO(プロフ) - はじめまして!この作品凄く好きです!!更新頑張って下さい! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 2f1eb9db7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:千景 | 作成日時:2020年1月14日 9時