30 . 俺たちのノンフィクション ページ30
眠くなるほどに廊下の窓から射し込む優しい日の灯を受けながら何時もの部屋へと向かう。
直ぐに目的の部屋に着き扉を軽くノックすれば1人の男がベッドに座っていた。
レ「キヨくん。体調はどう？」
キ「レトさん、また来てくれたんだ。...うん、だいぶ良くなってきたよ。まだちょっと縫い跡痛いけどさ」
面会室と同じように大きく開かれた窓に緑色のカーテン、そしてベッド脇のテーブルに置かれた雑誌...。
全てが見なれた景色だった。
レ「ほんと。顔色凄い良くなった。」
キ「でしょ?レトさんとAのお陰かな」
キヨくんは満足そうにふふんと鼻を鳴らして見せた。
軽く視線をソファの方に逸らした相手に質問を投げかける。
レ「...今日はAさん居ないの?」
キ「えっとね、ソファで...って。あれ、A起きてたの?」
ソファの方に顔を向けてくすくすと笑みを零す相手。
キ「レトさん来てるよ、ほら」
レ「Aさんこんにちは」
返事なんて帰ってくるわけが無い。
キ「え、また寝んの？...はは、冗談冗談。おやすみ。」
キヨくんは視線をソファからベッド脇に移し、手を伸ばして抱き締めるような動作をして虚空に向かって軽く微笑んだ。
レ「ほんとキヨくん達仲良いね。」
キ「まぁね。...レトさんは彼女作んねぇの?」
レ「俺は当分良いかな」
キ「ふーん...ま、レトさん来なくなったら寂しいしそっちの方が俺もちょっと嬉しいけどさ」
レ「安心して、ここに来なくなるってことは絶対無いからさ」
俺が軽くはにかんでそう返すと、キヨくんは真剣そうな顔で此方に言葉を投げかけた。
キ「...レトさんってなんでそんなに俺達のこと気にかけてくれんの?」
レ「そんなの心配だからに決まってんじゃん」
キヨくんが心配なのは事実だ。
もう亡くなってしまったAさんをいると思い込んで、話し掛けて。
でも、どちらかといえば”罪滅ぼし”に近いのかもしれない。
俺が意図したことでは無いとしても今キヨくんに起こっていることは全て俺がレンタルメモリーズを勧めたことで起こってしまったことなのだ。
キヨくんの人生を変えてしまった。
それも一般的に見れば悪い方向に。
その事を信じたくなくて、許されたくて。
今日も俺はすっかり口癖になった言葉を吐く。
レ「キヨくんが幸せにさえなれば、俺はそれでいいからさ」
fin
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もちすけ(プロフ) - あぷるさん» 私情の為返信遅れてしまい申し訳ございません;;コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです！前回のお話の後日談とかも沿って書いていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします...！！ (2021年7月2日 19時) (
レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
あぷる - すごく好きです（語彙力）感動したお話をさらに別視点で見れて感動が更に深まりました。更新がんばってください (2021年6月26日 21時) (レス) id: 9ae6da1d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちすけ | 作成日時：2021年6月12日 22時
