29 . 顕 ページ29
俺の大きい独り言の一連を聞いていたキヨくんはゆっくりと顔を上げて此方を見据えた。
此方を見据える目の瞼は赤く泣き腫らされているのに、瞳孔はまだ闇のように黒く沈んでいる。
まるでキヨくんの心が顕になっているようなその生生しいコントラストに俺は心が痛んだ。
キ「...信じてくれますか。Aが居るって。」
キ「...俺はレトルトさんのことを信じてもいいですか。」
レ「俺は...信じるよ。キヨくんのこと。」
口を噤んで軽く顔に笑みを浮かべる。
俺は上手く笑顔になれているだろうか?
俺の言葉を聞くなりまた目頭に涙を浮かべたキヨくん。
前以上に涙脆いのは不安定な精神が原因だろうか。
キ「俺のこと...誰も信じてくれなくて。Aは居ないんだって色んな人に言われたんです。」
キ「でも俺はAが居ないという事を信じられなくて、自分で殻を作ってそういう声から自分を守りました。1度Aが居ないと思えばどこかに去ってしまうような気がして。」
キ「Aも言うんです。『そんなこと言う人たちのことは信じなくて良い』って。」
相手の近くに寄ってしゃくりで小刻みに震えた背中を撫でる。
寝たきりが続いたからか、その背中は以前見た時よりも丸く巻き気味になっており。
レ「キヨくん無理せんとって。...キヨくんのこときちんと信じてるから、俺のこと信じて。」
ごしごしと袖で目を擦り、此方を振り返って表情を和らげたキヨくん。
キ「...ありがとうございます、レトさん」
レ「レトさん...って。なんでその呼び方...」
キヨくんは俺の言葉を聞くや否や少し瞳孔を開いて驚いたような表情に。
キ「自分でもよく分からないんですがふと頭に浮かんできて無意識に...」
レ「...ふふ、じゃあ今後はレトさんって呼んでよ。あと、敬語禁止ね。」
少しでも俺の事を忘れないでいてくれた事が嬉しくて俺は思わず頬を弛めた。
キ「敬語禁止...ですか？」
レ「今までずっとタメ口だったから敬語のキヨくんむず痒いというかさ。」
キ「そっか。...じゃあ、今後はこんな感じで。」
レ「うん、ありがと。改めて宜しく。キヨくん。」
キ「レトさん。此方こそ宜しくね。」
そう俺に言い掛けて軽く微笑んだキヨくんの表情はまるで。
まるで、Aさんが本当にキヨくんの近くで生きていた時と同じように感じた。
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もちすけ(プロフ) - あぷるさん» 私情の為返信遅れてしまい申し訳ございません;;コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです！前回のお話の後日談とかも沿って書いていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします...！！ (2021年7月2日 19時) (
レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
あぷる - すごく好きです（語彙力）感動したお話をさらに別視点で見れて感動が更に深まりました。更新がんばってください (2021年6月26日 21時) (レス) id: 9ae6da1d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちすけ | 作成日時：2021年6月12日 22時
