28 . 洗 ページ28
レ「ごめん、キヨくん...」
なんと言えばいいかわからずそんな在り来りな言葉を相手に掛けるも返事は帰ってこなかった。
激しい呼吸音と鼻をすする声だけが音として帰ってくるのみ。
こんなキヨくんを再び見ることになってしまうなんて。
...まるでAさんが事故で亡くなってしまった時の再放送みたいで、見ていられなかった。
大事な人を初めて失った時の悲しみ。
新しい大事な人と出会えた時の喜び。
1度大事な人を失っている分近くに居る大事な人が本当に愛おしくて仕方なかったはずなのに。
...2回も大事な人を失った悲しみなんて俺にはもう測りきれない。
いくらキヨくんが過去のAさんの記憶を失っていると言っても、1度は体が経験したこと。
こんなの耐えきれるはずがないのだ。
俺は今更、キヨくんに考え無しにAさんについて言ってしまったことに深く後悔した。
本当のことを言うべきなのか、キヨくんに話を合わせるべきなのか。
そんなのキヨくんとAさんの二人の様子を何度も見た俺が一番わかっているはずだろう。
レ「...そうだよね。」
無意識に震える唇をかみ締めて語り掛ける。
レ「俺、キヨくんが本当に羨ましかった。毎日楽しそうで、嬉しそうにAさんのこと話してくれて。」
レ「...そんなに仲良い2人が一緒に命を絶とうとすることなんてなかなか無いよね。警察に聞いたとは言えその理由だって無いんだもの。鵜呑みにした俺が悪かったかも。」
レ「ほんとにキヨくんの周りにAさんが居ないのならキヨくんいるなんて下手な嘘つかないもんね。そんなのずっと近くで活動してきた俺がよく分かってたのに。信じられなくてごめんね。」
レ「キヨくんは不運に頭の打撲とかの怪我でもしちゃって記憶喪失になっちゃったのかな。...まぁ、それも覚えてないだろうから今となっては分からないけど。」
レ「Aさんは病室に居るの？また会わせてよ、久しぶりに挨拶もしときたいし...さ。」
震える声のままそう普段よりも早い口調で言い切れば目頭がじわっと熱くなるのを手の内に爪を立てて抑える。
キヨくんにというよりも、自分に言い聞かせるように大きい独り言を喋ったのだ。
”Aさんは元気にキヨくんの近くで生きている”
ただその事柄で自分を洗脳するように。
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もちすけ(プロフ) - あぷるさん» 私情の為返信遅れてしまい申し訳ございません;;コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです！前回のお話の後日談とかも沿って書いていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします...！！ (2021年7月2日 19時) (
レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
あぷる - すごく好きです（語彙力）感動したお話をさらに別視点で見れて感動が更に深まりました。更新がんばってください (2021年6月26日 21時) (レス) id: 9ae6da1d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちすけ | 作成日時：2021年6月12日 22時
