8 . 再演劇 ページ8
出来るだけ音を立てないように玄関の扉を開けてみる。
中は誰もいないと錯覚してしまうほど静かで冷たい空気が漂っていた。
キ「ただいま」
そう声をかけて見れば、リビングの扉がすぐに開き
「お帰りなさいませ」
キ「遅くなっちゃってごめんね、温かいうちに食べよっか」
俺はリビングに入り、机にお弁当を広げる。
そして、手際よくコップに注いだお茶を持ってきてくれるA。
キ「ありがとう。椅子は好きなところ座ってくれていいよ」
そういえば、Aは俺の前の椅子に座った。
偶然だと思うが、そこは昔のAがよく座っていた椅子で何だか運命を感じた。
キ「勝手にオムライス選んできちゃったけど。大丈夫だった？」
そう。思い出の品というのはオムライスである。
Aはオムライスが大好物でコンビニに行けば毎回この弁当を買っていたものだ。
勿論、彼女自身もよく作ってくれていた。
「...大丈夫です」
言葉と違い表情が曇っている相手。
少し不安に感じながらもお箸を手に取り
キ「じゃあ、いただきます...」
「いただきます」
Aはオムライスを小さく割り、口に運んだ。
その様子を固唾を飲んで見つめる。
キ「...美味しい？」
「とても美味しいです」
ほんの少しだけ表情を緩めたA。
その顔を見て安堵の息を漏らす。
キ「良かったぁ...」
安心したところで、俺もオムライスを口に運んだ。
コンビニ弁当とは思えないふわふわの卵と濃厚なケチャップライス。
彼奴のご飯...また食べたいな...。
Aのことを考えて勝手に辛くなってしまう。
俺はその寂しさを紛らわすようにご飯を口にかきいれた。
.
「ご馳走様でした」
俺はプラ容器をゴミ箱に捨てた後、別部屋に向かおうと椅子から立ち上がった。
「あ、あの」
初めてAの方から声をかけられ驚きつつも
キ「どした？」
「オムライス美味しかったです」
「あんなオムライス、片手で数えれるくらいしか食べたこと無かったので」
「ありがとうございました」
またほんの少しだけ頬を緩めたA。
少し体温が上がったのを自分でも感じる。
いざ面と向かって感謝を伝えられるとかなり照れてしまう。
キ「いやいや！喜んでくれて良かった。」
思わず微笑みながらそう彼女に返す。
不意に見せられた笑顔に少し胸を高鳴らせながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちすけ(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます！！そう言っていただけてめっちゃ嬉しいです...(; ;)更新意欲に繋がります...！試行錯誤しながらですが、優しく見守っていただければ幸いです。 (2021年1月7日 20時) (
レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 最近読ませて頂いております！ 毎回続きが気になり更新を楽しみにしています！ 今後も更新頑張ってください、応援しています！！ (2021年1月6日 22時) (レス) id: 03f9e2cf64 (このIDを非表示/違反報告)
もちすけ(プロフ) - 如月さん» わぁ、コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉...！！もっと作品の質を向上出来る様頑張ります。これからもどうぞ宜しく御願い致します^^ (2021年1月5日 21時) (レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
如月 - めちゃくちゃ面白くて楽しませて貰ってます！更新頑張って下さい！応援してます！ (2021年1月4日 20時) (レス) id: 0ce8abb0bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちすけ | 作成日時：2020年12月29日 21時
