17 . 仮面 ページ17
キ「吐き気、今は大丈夫？」
安心させるように出来る限りの優しい声でそう問えば、彼女は軽く頷いた。
キ「リビング行こうか」
俺がそう言えば、Aはトイレの蓋に手を着き立とうとするも足が震えたのか再び座り込んでしまった。
例えるなら、産まれたての子鹿。
今にも壊れそうな脆い彼女の様子はそう例えざるを得なかった。
そんな彼女に手を差し伸べれば、冷たい手が恐る恐る震えながらも俺の手を掴んだ。
何とかリビングへとAを連れていったあと、Aをソファへと座らせる。
その後、未だ冷えたままのリビングの温度を上げ彼女の物だと思われる携帯を手に取った。
キ「これってさ、」
彼女に携帯を見せれば、俺の話を遮るように小さく声を漏らした。
彼女のこの様子を見る限り俺が外出している間に携帯で何かがあったのは明らかである。
俺の驚いた顔を見ると同時に目を逸らしたA。
お互いの不規則な呼吸音のみが部屋に流れた。
Aにどうやって聞き出せばいいのだろうか。
何となく、今の彼女に直球に聞くのは危ないような気がする。
少し考えた後、決心をつける。
キ「あのさ、A。」
キ「俺の話聞いてくれる？」
場には合わない、飛びっきりの笑顔を彼女に見せる。
彼女はそんな俺の様子の目をじっと見詰めた。
俺の様子を伺っているのか不安そうに揺らぐ彼女の瞳孔。
Aは、少しだけ頷いた。
キ「机の写真って見た事ある？」
彼女から返事が返ってくるとは思っていない。
返事を待たず次の言葉を紡ぐ。
キ「あの子と俺、付き合ってたんだ。1年前まで。」
キ「別れたとかならまだ良かったけど。うん、そう。事故でなくなっちゃった。」
キ「旅行バスに乗ってたんだけど、そのバスが崖から転落して俺以外の乗員は大体亡くなったんだってさ。」
キ「なんで俺なんか生き残っちゃったんだろって思ったよ。どうせなら、あのまま俺もあの子と一緒に眠りたかった。」
喋りながらも自分の笑顔がどんどんと歪んできているのが分かる。
言葉にしてみて尚、零れてくる涙。
目の前の彼女とAが重なり視界が歪む。
それでも、俺はしゃべり続ける。
笑顔と言えない笑顔を仮面のように顔に張りつけたまま。
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もちすけ(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます！！そう言っていただけてめっちゃ嬉しいです...(; ;)更新意欲に繋がります...！試行錯誤しながらですが、優しく見守っていただければ幸いです。 (2021年1月7日 20時) (
レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 最近読ませて頂いております！ 毎回続きが気になり更新を楽しみにしています！ 今後も更新頑張ってください、応援しています！！ (2021年1月6日 22時) (レス) id: 03f9e2cf64 (このIDを非表示/違反報告)
もちすけ(プロフ) - 如月さん» わぁ、コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉...！！もっと作品の質を向上出来る様頑張ります。これからもどうぞ宜しく御願い致します^^ (2021年1月5日 21時) (レス) id: 8be7e3d78d (このIDを非表示/違反報告)
如月 - めちゃくちゃ面白くて楽しませて貰ってます！更新頑張って下さい！応援してます！ (2021年1月4日 20時) (レス) id: 0ce8abb0bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちすけ | 作成日時：2020年12月29日 21時
