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『な、なんかごめんなさい…タオルまで…』
「いや、俺もなんかすみませんでした…」
じゃぁ、ご馳走になります
と
彼女は手元の水を飲んだ
マンちゃんと同じで、それがたとえ水だったとしても何か別のものを飲んでいるように見える。
それくらい動作が美しい。
ただ、唯一違うのは、陰鬱に見えるところだろうか。
「…勝手にタオル使ってごめんね」
『こちらこそ、ただタオル使われただけなのにここまで…』
彼女はペットボトルのキャップを開けるとそのまま笑って話す。
でも、正直助かりました。
彼女は頬を掻きながら照れ臭そうに笑った。
どうやら、プールが楽しみすぎてプールの道具は全て忘れ物なく持ってきたのに水分取るための水筒なんかを忘れていたようで
『喉乾いたから帰ろうと思ってたんです丁度もうすぐいいくらいの時間だし、仕方ないかなぁ、でもせっかくここに来たんだからすぐ帰ったら勿体無いなぁって』
いやぁ、助けてもらいました！家の中何もなくて
ヒマに殺されるところだったんです
ヘラヘラ笑って彼女は自分を見る。
綺麗な黒色の目がしっかりとみてくれる。
「そうなんだ」
『えぇ、まぁ』
会話スキルは大ちゃんみたい
ただ、唯一違うのは、中身がないことだろうか？
しばしの沈黙。気まずくてそらしたはずの視線がバチっと交差した。
『……名前、“あららぎ”さんであってますか？』
「え？あ、うん。よく読めたね」
時刻はもうすぐお昼になろうと言うところ。
1人、また1人とタオルを持ってシャワー室でシャワーを浴びに向かう。
ベンチに座る男女はその場にいた周りの人たちの格好の的となり、ヒソヒソと話されている。なんだか居心地がすごく悪かった。
『私の曽祖母の手芸クラブに“蘭”って書いて“あららぎ”って読む人がいたんです。懐かしいなぁ。元気かなぁ？』
遠くを見ている彼女はふぅ。と一息つくと、シャワー室の方へと向かう。
そのアララギさんは自分の祖母の気がして会話を続けようとしたところだった。
迷いなく荒む彼女にタオルを返してもらおうと追いかけると彼女はいたずらっ子のように笑った。
『また明日も会えますよね？』
その日は予定があったが、なんとなく、うん。と頷いてしまった。
にへらと笑うと、じゃ、そう言う事で〜
と彼女は去っていった。
去る時もその気品はそのまま、なんだか
「グルちゃんみたい」
彼女のいたずらっ子のような笑みが知り合いに酷く酷似していた
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作者名：クロエ | 作成日時：2023年1月25日 17時
