time sharing house～日常茶飯事～ (ページ44)

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　「ただいま！」

　「ただいまぁ～」

　おやつ時を少し過ぎた時間、ちゃんとふたりハウスに到着。
ガラスのドアはちゃんが開けたから今日は怒られない。

　のんびり帰宅のあいさつをしてＬＤＫへ入ると、リビングでは山田と知念が夏休みの課題中。
髙木はもう仕事へ行ったあとみたいで、その姿はない。

　管理者のひかは居るはずなのに、どこにも見当たらないって思ってきょろきょろ。
俺の隣でちゃんも変な顔をしている。
いつもなら一番に出迎えてくれる人なのに。

　「あ、おかえり。裏に居たから聞こえなかったわ、ごめんね」

　キッチンから裏庭に出られる勝手口のドアが開くと、ひかが入ってきた。
なにも持っていないけど、裏でなにをしていたんだろう。
疑問はあるけど、俺たちには分からないこのハウス管理者の仕事がひかには多くあるから。

　「ただいま、ひかる。いい匂いする・・・」

　なにの匂い？なんて聞きつつちゃんはひかのほうへとことこ歩いていく。
気付かなかったけど、ＬＤＫ全体にほんのり甘い匂いが漂っていて。
匂いの元を見付けたらしいちゃんは、オーブンを覗き込んでいる。

　「暇だったからクッキー焼いたの。焼き上がったらお茶にしよう？」

　焼け加減はどうかな。
オーブンを見るひかに、うんと頷いたちゃんはどこかうれしそう。
じゃあ荷物置いてくるね、とキッチンを離れて２階へ。
階段を上っているところへ勉強している山田からヘルプが入ったけど、機嫌よく応えるちゃん。

　若干落ち込んでたの、持ち直したかな。

　「ありがとね、ひか」

　「ん？なにが？」

　「なんでもなーい」

　俺がお礼を言った理由なんて、ひかは分からなくていいと思う。
ほんとうは分かってほしいけど、それは違う機会でいいんだ。
ちゃんは沈んでいたことさえ、知られたくはないと思うから。