↓ ページ12
「いのちゃん」
よく頑張ったね、もう大丈夫だよ。
向かった先の店は、よくあるチェーンの大衆居酒屋で。
参加人数の多さが分かる大部屋の、入ってすぐのところに伊野尾は座っていた。
ぼんやりと、なんとか眠らず意識を保った状態で。
そんな伊野尾の横では光に連絡をくれた友人が他の連中を威嚇している。
部屋に遠慮なく入ってきた俺たちを見て、明らかにほっと息を吐いたな。
よく目にするのとは逆パターンの光景ではあるものの、そのくらい伊野尾を狙ってる奴が多いってことだ。
女ひとりで守らせようっていうほうが酷だな。
「ひ、かる・・・？」
夢？俺寝ちゃった？
意識がだいぶ混濁しているのか、光のことを認識してはいるものの現実とは捉えている様子のない伊野尾。
目線を合わせるように座り込んだ光が手を握ると、安心したのか肩に頭を預けると呼吸がゆっくりになった。
「寝たか？」
「うん」
光にだらりと身体を預け切って眠る伊野尾の頭を軽く撫で、ぐるりと部屋の中を見渡した。
俺と光を見て悔しそうな、企みが外れた顔をした連中をぎろり睨み付ける。
何人かそうして威圧しておき、不思議そうな顔をしているもののあまり動じた様子のない幹事っぽい奴を見つけ出す。
寄っていき間違いないか聞けば、その通りだと頷いたから財布から万札を抜いて手渡した。
ふたり分だが足りるか、聞けば充分ですという返事。
学生が使う居酒屋で飲み放題だとしても、相場は高くない。
恐らく渡した金額だと釣りがあるだろうが、どうでもいいことだ。
「薮、荷物」
「ああ」
光と伊野尾のところに戻れば、眠ってしまった伊野尾を器用にも光は背に負っていて。
いつものように横抱きで連れていくものと思っていたから、おんぶ姿はなかなか意外だ。
光が示した伊野尾の荷物を手に取り、未だ座ったままの伊野尾の友人を見た。
伊野尾がここから離脱することで、肩の重荷が下りたからこのまま飲み会を楽しむのか。
それとも―――
「おい、どうする？」
伊野尾を背負った光はすでに個室の出入口を潜ろうとしている。
それを横目に伊野尾の女友だち――面白い女に声を掛ければ一瞬きょとんとしたものの。
すぐ意味を悟ったのか、きょろりと辺りを見回す。
そして心底面倒くさそうな顔をして、さっと立ち上がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
晶(プロフ) - 麻李有さん» いつもながらありがとうございます。楽しんでいただけたなら良かったです。再度のリクエストに関してはご相談しつつ受けるかどうか決めさせていただきたいと思いますのでご了承下さいm(__)m (4月22日 21時) (
レス) id: 8d76f9f2b3 (このIDを非表示/違反報告)
麻李有(プロフ) - ご無沙汰しております。リクエスト書いて頂きありがとうございました！めちゃくちゃ良かったです、どタイプです！やっぱり主様の書かれるtkar大好きです！複数回で申し訳ないですが、またリクエストさせて頂いてもよろしいですか？ (4月21日 23時) (レス) @page35 id: 6cf1168dd8 (このIDを非表示/違反報告)
麻李有(プロフ) - 晶さん» いつまででも待ちます！よろしくお願いします(*^^*) (12月26日 21時) (レス) id: 6cf1168dd8 (このIDを非表示/違反報告)
晶(プロフ) - 麻李有さん» 遅くなりまして…そんなにツボっていただけてるならうれしい限りです(*´∀｀)いまのとこぱっと構想浮かばないので、少し考えさせて下さい。視点もこちらで決めさせていただきますね！お待ちいただければと思いますm(__)m (12月26日 12時) (レス) id: 8d76f9f2b3 (このIDを非表示/違反報告)
麻李有(プロフ) - 晶さん» ありがとうございます(T^T)視点はお任せしたいです！本当に主様の書くtkarさんが好きすぎてツボなんです！お付き合いのきっかけになったお話と、デートしてるところ、お付き合いするまでのarさん自覚してない頃とかも全部がツボです！ (12月24日 20時) (レス) id: 6cf1168dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：晶
| 作成日時：2023年9月9日 2時
