♭ ページ9
「ちぃっ！」
「ふんだ。りょーすけが悪いんだよ」
ぐ、と下から引っ張られる力に耐えきれずベッドへと倒れ込む。
咄嗟に手を付いて踏ん張ったけど、俺の下には頬を膨らませて拗ねている知念。
「いくじなし」
「お前・・・あとで文句言うなよ？」
知念を押し倒してる状態だということに気付き、一気に上がった体温。
そっと身体を起こそうとしても、首の後ろに回された腕に阻まれて。
む、と突き出したくちびるで意気地なしなんて―――
俺の気持ちを知っていてこんなことしてるんだと気付いた瞬間に、ぷちんとなにかが切れた。
この状況に誘い込んだのは、俺を追い込んだのは知念だ。
これから俺がなにをしようと、知念が泣いて逃げようとしても逃がす気はない。
だってこれ、据え膳だろ？
「望むところだよ」
べ、と挑むように出された舌。
それへ喰い付くようにくちびるをぶつけた。
・・・あ、誰だか分かったわ。
知念をこの状態で俺のところへ送り込んだやつ。
ホテルの部屋へ侵入した方法は分からないままだけど。
ま、いい。
明日は東京へ戻るだけのスケジュールだから。
好き勝手させてもらうよ、心置きなく。
「おはよ」
「おはよぉ」
朝、腕の中にはすっかり酔いが醒めた知念。
声を掛けると照れた様子なんて欠片もなく、くふくふ楽しそうに笑い出す。
きょと、と瞬く俺を見てより深くする笑み。
「据え膳、どうだった？」
「そりゃ・・・あ、お前酔ってなかったな？」
「えー？それはどうかなぁ？」
うん、これは絶対酔ってなかった。
ってことは俺、嵌められたのか。
けどまあ、結果オーライってことで。
＃お色気作戦 大成功！？ 大成功！じゃねぇよ！！
fin.
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作者名：晶
| 作成日時：2022年9月5日 21時
