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 「光くんと別れたの?」

 へなへなと崩れ落ちてしまった伊野尾くんの傍に膝を着いて、その顔を覗き込んだ。
びくり肩を震わせたと思えば、みるみるうちに涙が溜まっていく瞳。

 想像以上にダメージ受けてるな、と思う。
不用意に傷を抉ってしまったかと焦りもした。

 ねえ光くん・・・なにがあったとしても、別れちゃダメだったと思うよ。
だってどう見積もっても伊野尾くんは光くんに未練ありまくりだし。

 きっと光くんも、伊野尾くんのことまだ好きでしょ。

 ふたりが嫌い合って別れたんじゃないってことはこれではっきりした。

 なら俺のすることは、光くんの代わりに伊野尾くんの傍にいることじゃなくて―――

 「もう付き合えない、って・・・」

 そう言われて、簡単に諦めたの?
別れようって言われた理由も聞かずに。

 「嫌だって言わなかったの?」

 「言えるわけない!」

 どうも伊野尾くん、別れを切り出された原因は自分にあると思ってるみたい。
強ち、まったくの間違いってわけじゃないんだろうけど。
絶対それだけじゃない、って言い切れる自信俺にはある。

 光くんが忙しかった間、伊野尾くんは他の友人たちと遊んでた。
ひとりでいるのが好きそうに見えるのに、意外と淋しがりな伊野尾くん。
休日にひとりでいると、光くんに会いたいって言っちゃいそうだからって予定詰め込んで。

 それは光くんに時間が取れるようになってからも続いた。
どうしてそんなことしたのか、聞けば。

 漠然と、怖かったからって。

 「ひかるに頼り切りじゃなくても俺は大丈夫だって、見せたかったの」

 付き合い始めてから、光くんにべったりだった伊野尾くん。
甘えすぎって自覚はあったみたいだけど、光くんがそれを許してくれるから直そうとはしてなくて。
でも一度離れてみると、このままじゃそのうち愛想尽かされるって考えちゃったんだね。

 「ひかるが会わない?って言ってくれたのに、予定あるってずっと断ってた」

 会えてなかった反動で、酷く甘えちゃいそうだったと。
会えなかったのは仕事のせいだって分かってるのに、光くんを責めてしまいそうで怖かったんだね。

 でもそうやって光くんを避け続けた結果が、これだ。



















♭→←#いまさら遅い(tk)※tk+in [+hk]



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作者名: | 作成日時:2022年9月5日 21時

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