#陽だまり(yb)※yb+hk+yt ページ31
海辺に建つ、豪華な洋館の一室。
海側はすべて大きな窓ガラスで、そこから燦々と気持ちの良い陽光が差し込んでくる。
ぐるりと洋館の中を歩き回った後、そこを俺たちの待機場所に決めたのは正解だったと思う。
重厚なドアを開けば、電気なんて必要ない明るい室内。
広い割に特に家具も置かれていないから、がらりと淋しい印象を受けるけど。
部屋の中央辺り、海に向かって弧を描くように置いてある大きなソファー。
出入口に背を向けるようにあるそれに、人影はひとつだけ。
おや?と思い静かに近寄っていく。
少なくともここには三人以上居ると踏んで来てみたんだが・・・
「おい、光」
後ろ姿でも誰なのか分かる、その背に声を掛ければ。
振り返った光は、俺に静かにするよう視線で訴える。
静かに、大きく口は動くけど音は聞こえない。
なんだ、と思いソファーに近付けば。
そこには光を囲うように眠っているふたり。
背の低いソファーは、どちらかといえば大きい座椅子みたいな感じで。
足は床に敷いてあるラグに投げ出すように座る。
ここは洋館だから室内でも靴を履いて移動しているけど。
さすがにラグへ土足で上がる気にならなかったらしい三人の靴はソファーの陰に脱いであった。
ソファーに深く座り、胡坐を掻いている光。
その左足を枕に、横たわりぐっすり眠っている侑李。
逆側には光の右半身に寄り掛かり、肩に顔を埋めている――伊野尾が。
ふたりを起こさないよう、あまり身動ぎできない光は唯一空いている左手でスマホを扱っていたみたいだ。
「寝てるのか?」
「ちょっと前まで起きてたんだけどね」
こそこそ、小さな声で。
ふたりに配慮すれば、どうしたって近くなる距離。
いま侑李と伊野尾が起きれば、俺は確実に視線で殺されれる。
「で、どんな感じ?」
「今日中は無理そうだ。だから自由に過ごしてていい、だと」
「そっか」
じゃあ起こさなくていいね、と光はふたりの頭をそっと撫でる。
俺が来たから起こす必要があるのか気を揉んだらしい。
「あとの四人、どこにいるか知ってるか?」
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作者名:晶 | 作成日時:2022年9月5日 21時