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「はいはい、俺のこと好きなのはよく分かったから」
おっと、ここにも勘違い野郎がひとり・・・と言いたいところだが、これは強ち勘違いでも自惚れでもない。
でれっでれに崩れた顔を晒して、侑李の頭を撫でている涼介。
おいエース、その顔は頼むから外で見せないでくれよ。
それにしても、涼介がこんな顔してるってことは。
また侑李になにかお願いされたな。
お願いっていうか、おねだりかもしれないが。
これが欲しい、ここへ行きたい、これ食べたい。
かわいらしい我儘を侑李が一番言うのは涼介が相手のときだ。
その度に涼介は渋ることもなく――あまりに高額なものを強請られると一瞬躊躇うが――いいよ、って言って笑う。
傍から見ていると、ただのカップルにしか見えない。
甘え上手でかわいい彼女と、それを深い懐で受け入れる彼氏。
けどなぁ、付き合ってるわけじゃないんだよな、こいつら。
絶対付き合ってるって言われたほうが違和感ないのに。
でも、涼介と侑李はお互いが大好きだ。
その好きが恋愛なのかそうじゃないかは、本人たちしか分からない。
俺らからすれば、ただ鈍いだけのような気がしてる。
「やったぁ！涼介大好き」
「分かったわかった」
じゃああとでね、と侑李はぱたぱた涼介から離れていく。
あとでってことは今日のおねだりは飯か。
いのちゃーん、と伊野尾に抱き付きにいった侑李の後姿を見ていた涼介は。
とろとろだった顔がドロドロの状態でぴしりと固まった。
「おい、涼介」
「無理」
俺の言いたいことは分かったのか、即答した涼介。
いや、無理じゃなくてだな。
「いい加減メンバー相手くらい諦めろよ」
「それも無理」
いちいちメンバーに懐く侑李の行動に引っ掛かってると身が保たないぞ。
なんたって侑李はメンバーが大好きだからな。
俺たち以外の、侑李に言い寄る勘違い野郎たちには威嚇したって構わない。
それは侑李――伊野尾もだな――以外のメンバーに課せられた役目だ。
「だったらきちんと侑李捕まえとけ」
そう、それが一番いい。
熱いまなざし 勘違い ＃君は小悪魔
fin.
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作者名：晶
| 作成日時：2022年9月5日 21時
