#適役は他に(hk)※tk+hkin ページ16
「ねえ・・・」
「ん?」
「彼女とかいるか知ってる?」
昼休み、ざわざわと騒がしい教室の一角で。
俺と顔を突き合わせていた友人は、とある方向を見てぽつりと呟いた。
ちらり、俺にとっては後方になるそこをそっと窺って。
同じ教室内、楽しそうにはしゃいでいるクラスメイトたち。
めちゃくちゃ近い距離感でじゃれているのは、いつだって目にする光景だ。
仲が悪いわけじゃないけど、特別良いほうでもない。
ほんとクラスメイトっていう表現が似合う、俺たちとは別の友人グループで過ごすそのふたり。
そのうちのひとりに、目の前の友人はそこそこの期間片想いをしている。
「なんで俺に聞くの?」
はぁ、となんとも色っぽ・・・いや、エ ロいため息を吐く友人を呆れた目で見遣る。
いったい何度、この会話をしただろうか。
俺に聞いても無駄だって言っても、この友人は一向に諦めはしない。
自分で聞いてこい、って毎回言ってるんだけどな。
そもそも、どうして俺が向こうの恋愛事情を知っていると思うのか。
普段から俺たちは学内でほぼ一緒に過ごしていて、向こうのグループと関わることなんて基本ない。
そりゃ授業が絡むと話すことはあるよ?
でもさ、そんなときにプライベートな会話なんてしないでしょ。
「でも俺よりは仲良いでしょ?」
まあ確かにね。
一度体育かなにかの授業中、ちらっと話すことがあって。
同じような趣味を持っていることを知り、盛り上がったことはあったよ。
けどさ、ほんとそれだけ。
たまにお互いの連れが傍にいないとき、立ち話をする程度だ。
「聞けばいいだろ、自分で」
やっぱり同道巡りの会話はいつもと同じところへ着地する。
「いや、でも恥ずかしいし・・・」
見た目チャラくて、遊んでいそうな奴なのに変なところが純情というか。
顔を染めて、目を逸らして・・・ってかわいくないから。
「それに、ほら」
「なに」
「そんなこと聞いて変な奴って思われたくない」
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作者名:晶 | 作成日時:2022年9月5日 21時