# a scene (ページ2)

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　「おはよー」

　「あ、おはよう」

　「おはよう、伊野尾」

　会話が完全に聞こえなくなったのを見計らい、一度大きく息を吐いて。
いかにもいま来ましたって顔をして楽屋のドアを開けた。

　思っていた通り、中に居たのは薮と光だけ。
あんな話をしていた割には、ぴりぴりした空気感はない。
ほんといつも通りすぎて、さっきまで聞いていたのは空耳だったのかと疑うくらい。

　荷物を置いて、仕事の進行表を確認すると。
俺の出番はだいぶ遅いことに気付いたから。

　「俺、隣で寝てるね？」

　人数の多いグループだから、楽屋は大抵ふた部屋ある。
どうしたって片方へ寄ってしまう俺たちだけど、仮眠するときとかはもう片方を使うようにして。

　寝不足で眠いです、って顔をしてそそくさと俺は逃げる準備をする。

　たとえあれが俺の空耳だったとしても。
暴れる鼓動と流れる嫌な汗はまだ止まっていないから。

　ちょっと平静に戻るためには、ふたりと一緒にいるのは難しい。

　「時間近くなったら起こしにいくから。ゆっくり休んで」

　あとでね、と目を細めて笑った光にうんと頷いてドアノブに手を掛ける。
一段と激しくなった心臓の音は・・・聞こえてないって信じたい。

　「あんまり無理するなよ」

　ぽす、と頭に乗せられた手。
ちらりと視線を上げれば、顔を覗き込んできた薮に、ぐりぐり乱雑に撫でられた。

　やり方は乱暴だけど、心配されてるのは分かる。

　「大丈夫」