a dream of a house〜日常茶飯事〜

・as in the original...ideal（yb）※hkin ページ31

　「ただいま」

　「お、おかえり」

　新年度が始まって、２日目。
昨日の入社式で初めて顔を見た新入社員たちが、本格的にオフィスへ入ってくる初日。

　特に新人教育にも当たっていないし、挨拶回りでもしてくるか。
いくつか担当している顧客のところへ顔を出し、終業間際に戻ってこればいい。

　なんて、軽く考え。
営業してくると伝えて出て行こうとすれば、なぜか新人のひとりを連れて行くように言われ。
そのせいで顧客とも込み入った話ができず、担当変更するのかとか妙な探りを入れられ。

　無駄に疲れた１日になった。

　俺に付けたところで、なんの勉強にもならないと思うんだがな。
そもそも、商品の売り方なんざ自分で覚えていくしかない。
とにかく知識を付け、トーク技術を磨くしかできることはない。

　あとは・・・人脈作っておくくらいか。

　これから暫く、こんな日が続くかもしれないと思えば。
考えるだけでどっと疲れを感じる中。

　３日前から住み始めた、新しい『ハウス』へ帰ると。

　キッチンに立っている光が、ぱっと顔を上げた。
時間的に夕飯でも作っているのか、光の両隣に涼介と裕翔が立っている。

　ダイニングには誰の姿もなく。
仕事に行っている雄也以外の四人は、リビングでなにやら盛り上がっている様子。

　座ってコーヒーでも飲みたい気分ではあったものの。
スーツのままいるわけにもいかないし、そんなことをすれば光が煩いから。
取り敢えず着替えるか、と自分の部屋へ。

　いや、疲れてるときに３階は地味にしんどい。

　口に出しては言わないけどな？
言えば、お前いくつだよ、って光に呆れられるのは分かっている。

　部屋へ入れば、高さもあって見晴らしがいい。
外はまだまだ明るいから、住宅街の様子がよく見える。
とんでもない規模の家が、周りにいくつもあるこの環境。

　こんな場所に男ばかり――それも、年齢もばらばらな九人が住むとなれば。
要らぬ好奇の視線に晒されるか、と危惧してはいたものの。

　そこは良くも悪くも高級住宅街。
他人の家庭事情に土足でずかずか踏み込んでくる人はいないようだ。

　陰ではなに言われてるか分かりもしないが。

　まあこの土地の持ち主を思えば・・・平気か。

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