a dream of a house〜日常茶飯事〜

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　「なあ、雄也」

　「ん？」

　「今年は大ちゃんの誕生日が日曜日だから、バイトに行かない限りハウスにいる可能性が高い。他の誰かに誘われても、ハウスで過ごすことを選ぶだろうとは思う」

　有岡くんが可哀想、と言った伊野尾くんの声は震えていて。
顔は見えないけど、たぶん泣きそうになってるんだろうって分かる。

　「だから、雄也も急いで大ちゃんの予定を押さえよう、って思わなかったのかもだけどさ」

　「これがもし、平日だったら？」

　有岡くんの誕生日当日が、平日だったら―――

　当然だけど、有岡くんは学校に行っている。
専門学校三年目の専科生になって、現地実習も多くなったと聞いた。

　平日であれば友だちや実習で知り合った人たちに囲まれて、みんなからお祝いされ。
その流れだとお祝い兼ねて遊びに行こうとか、ご飯へ行こうって話になるはず。

　もちろん俺も仕事に行っているから、有岡くんだって友だちに祝ってもらうのを優先するかもしれない。

　ハウスのみんなには当日の朝、もしくは帰ってきて夜、確実に“おめでとう”の言葉を掛けられているし。
週末にはパーティーをするの、恒例になっているから。

　敢えて平日の夜、遊びに行かないっていう選択肢はない。

　でも俺はほんの短い時間でも有岡くんがいい、って言ってくれるなら。
仕事終わり、どこかに出掛けようって前以て誘っているはずなんだ。

　それを、当日が日曜日だからって。
有岡くんが他の誘いを受けない保証はないのに、頭のどこかでは平気だろうって安心してた。

　デートプランとプレゼントが決まって、直前に誘っても受け入れてくれるって。

　俺は“恋人”だから、なんて傲慢になっていたつもりはないけれど。

　「いつも雄也は行動が後手に回りがちだけどさ。大事な日はきちんと押さえてないと、絶対大丈夫は通用しないよ？」

　完全に約束してしまわなくても、誘うよってことくらい匂わせてないと。
さり気なく予定聞いておくとか。

　「誘ってもらえるか分からない。でも期待もあるから待ってる。けど、そんな素振りさえ見せてもらえなかったら―――不安で仕方がないのは恋人でも同じでしょ」

　いのちゃんがこんなに怒ってるのは、そのせい。
大ちゃんのこと誰よりも近くで、一喜一憂してるのを見ているから。

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