a dream of a house〜日常茶飯事〜

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　「いのちゃん？」

　「えっ！？あ、ごめん」

　「ううん。手に取ってみたいものあった？」

　すごく真剣に見てるから、欲しいって思うデザインがあったのかと思ったけど違うみたい。
ひとつひとつ丁寧に眺めてるだけ、って感じかな。

　「指輪のサイズ測ってもらうことできますか？」

　声を掛けてきたあと、俺たちの近くで様子を窺っていた店員さんに聞いてみる。
前に指輪を宣伝するために手のモデルをしたとき、おおよそのサイズ感は分かっていたけど。

　一度、きちんと主だった指は測るほうがいい。

　こちらへどうぞ、と促されて座ったテーブルの近くは指輪ばかり。
他のお客さんも座っている人は指輪が目的みたいだね。

　買いはしないから、ちょっと申し訳ない気分にはなるものの。

　こちらを、と差し出されたたくさんのリングが束になったものを渡される。
ひとつひとつサイズの違うそれを嵌め、確認していくみたい。

　これかな、って直感で嵌めてみる。
意外と大きかったから、それよりひとつ小さいやつを試す。

　あれ、これも違う。
簡単に見付かるかと思ったけど、案外難しい。

　苦戦している俺の横で、いのちゃんは順調に自分のサイズを見付けていっているみたい。
分かったサイズは店員さんがきちんと記録してくれていて。
同じサイズの指輪を紹介されているけど・・・

　ん？無関心？

　「好みのデザインない？」

　「・・・そういうわけじゃないけど」

　店員さんが離れた隙を狙って、こっそり聞いてみると。
染まった顔を俯け、ぼそぼそと言い難そうないのちゃん。

　言って？と促せば。

　「ひかるが選んでくれるやつのほうがいい・・・」

　「ん、分かった」

　いのちゃんがそう望んでくれるなら、俺が責任もって選ぶよ。
でもね、これだけは教えて？

　「こういうのは嫌、っていうのだけは言ってね？」

　好まないモチーフとかがあったとしたら、選ばないように気を付けないとだから。

　指輪はサイズを知りたいだけだったから。
俺は気になってたモチーフのネックレス――ペンダント？とケースから出してもらい。
それをいのちゃんに付けてもらった。

　左利きの俺は金具を逆の手で持つの、やり難くて。
だったら、と正面からいのちゃんの後ろ首へ手を回せば。

　真っ赤になってかちこちに固まっちゃったいのちゃんは、店員さんにもかわいいって言われてた。

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