5 ページ4
「で、早速で悪いんだけど、あんたの主さんに会わせてくれない?お礼が言いたいの」
アタシがそう言うと、大典太光世の表情が曇った。
「……主は、いない。今日いなくなった」
「は?」
え、いや、どういうこと?今日いなくなった?なにそれ。
「ちょ、どういうこと?いなくなったってなによ?」
「そのままの意味だ。朝になったらいなくなっていた。……だから、主には会えない」
彼の言葉に、思わず起き上がってしまった。
身体中が痛い。
「どういうこと?置いていったってこと?あんたたち刀剣を残して?」
「……そうだ」
驚きすぎて脳が一気に活性化した。
審神者がいない?しかも消えたのは今日?
「待って待って待って、じゃあこの本丸は_______」
「っ、やめろ!俺に触るな!」
彼に触れようとしたアタシの手は、彼によって払いのけられた。
……え、下心ありとか思われた?いやないわよ。こんな状態でも下心出せるほど図太くないわ。
「俺には触れない方がいい。……近づかない方がいい」
そう言う彼の顔はひどく辛そうだった。
アタシの手を払い除けた彼の手は震えている。
「あんたね、乙女の手を振り払うなんてどうかしてるんじゃないの?女に恥をかかせるような男はダメよ」
「……は?あんた、男だろ……っ!?」
アタシは素早く彼の腕を掴んだ。
例のごとく大典太光世は嫌がり、アタシの手を振りほどこうとする。
「なんで触れない方がいいのよ?だってあんた、今までアタシのこと見ててくれたんでしょ?優しいじゃない。なにを怖がってるの?」
動揺したように彼は視線を彷徨わせる。
アタシの手を振りほどこうと抵抗する力も一気に弱まった。
「ダメだ、俺は……、俺が近くにいたら、」
「大丈夫よ。なにが怖いのかは知らないけど、アタシはなんともないしなにも起きてないわ」
大典太光世の不安げな瞳が揺れる。
「怖がらせたのならごめんなさい。でも、そんなに怯えないでちょうだい。……あんたはいい刀よ」
大典太光世は驚いた顔をしてアタシを見た。
抵抗していた力もなくなり、今は彼の手がアタシの腕に置かれているような状態だ。
彼は再び顔を伏せた。
「……ちょ、ちょっと、泣いてるの?」
アタシは慌てて服の袖で彼の涙を拭う。
体は大きいのに、なんて小さな刀だろう。
アタシは彼が、なぜかとても可愛く見えた。
478人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔、藍、love(プロフ) - 2話が抜けてるのですがただの3を打ち間違えただけですか? (2018年12月7日 14時) (レス) id: 32db5f9d5a (このIDを非表示/違反報告)
霧陰三文字 - あ、待って好き。← なんか始まったばっかりなのに泣きそうになってきました()更新楽しみにしてます! (2018年9月21日 1時) (レス) id: 4d70f7c8ca (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください! (2018年9月9日 23時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄シャーベット(プロフ) - 好きです、愛してます(真顔)めちゃくちゃ面白かったです!更新頑張ってください!(ゆっくりで大丈夫ですからね!)応援してます! (2018年9月5日 15時) (レス) id: f6cb6ae02b (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - この作品とても面白く読ませていただきました!続き待ってます。 (2018年9月4日 21時) (レス) id: 7d9698e044 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めありー | 作成日時:2018年8月27日 17時