聞こえる。声が。 ページ50
ほのか「ヒッ…!」
また指を糸に引っ張られ、ビックリして情けない声を出すほのか。
??『…ねぇ、君は何か心に残ってる事でもあるの?』
男の子はニコニコと首を傾げる。
ほのか「…わかんっ…ないっ…!!けど…思い出し…たい…。」
弱々しくも放った言葉は芯がなかった。
??『ふーん。でもさ、ここまで来たのに?』
あと数歩で着くであろう光の先。
ほのか「…じゃあ…私が質問。……貴方の言う"救い"って…何…?」
??『…は?』
男の子は先程の声色など微塵も思わせない冷徹な声を漏らす。
ほのか「貴方が…言っている"救い"って…多分…死ぬ事…でしょ…?」
??『……それが何?』
もはや演技をやめ、何の表情も示さない目でほのかを見る。
ほのか「…私は生きたい。この夢からも覚めたい。」
だんだんと芯のある言葉に変わっていく。
それと同時に赤い糸も手首に沢山絡みつく。
??『…ふふ、僕がそんなこと許すと思う?』
演技ではなく本心から笑い出す。
??『教えてあげるよ!僕が夢魔だ!一生目を覚まさない様に!幸せにしてあげるのが僕さ!!むしろ感謝して欲しいね!!』
癇癪を起こした子供のように喚き散らす夢魔は理性などそこには無かった。
ほのか「……私…には…待ってくれる人がいるっ…!!」
夢魔『へぇ…?じゃあ、言ってご覧よっ!?死んだお父さん?お母さん?冷たい兄さん?それとも君の事を良い人だとだけ思ってる同僚っ!?君にはホントはなぁぁーんにも無いんじゃないかっ!!!』
気が触れたようにずっと喋っている夢魔は幼い子だ。
……とても…寂しい幼い子。
ほのかは思い出そうとした。
…あの人は…あの人達は…!!
誰っ…だれなのっ…!!
私は…よく知ってる…!!
実夢ちゃん…ヤシロさん…源さん…生徒の皆…!!
………………蜘蛛みたいな猫かぶりさんっ…!!
ほのか「…残念だけど、私には沢山の待ってくれる人がいる。……土籠先生とかね。」
いたずらっ子の様に笑って舌をペロッと出したほのかは勝ち誇った気分だった。
夢魔は絶句した。
……絶対に思い出せないように強い術をかけていたのに…!!
元々コイツは何故か強い糸が沢山あった。
だから、その幸せをぶち壊してやりたくて面白半分でやった事だった。
ほのか「…私の勝ち。」
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作者名:リガロ x他1人 | 作成日時:2019年8月21日 23時