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ページ25

『あのなぁ、奥さん。現実は知らせた方がいいぞ。』


「な、何なんですか貴方っ…!!」


『通りすがりの医者だよ。』


完全に母親は怯えているがAは知らん顔で続ける。


『虫歯菌が血管入って、脳に行って、心臓に行って、肺に行って。

今以上に痛くなるだろうよ。』


「ひっ…びゃあああ!!」


「Aさん、やめてください。怯えてます。」


出来れば他人のフリをしたいレベル。


彼女はどうするつもりなんだろうか、と七海は呆れていた。


怒る心などAへは無駄でしかないことを知っているからだ。


『坊主、今よりももっと痛くなりてぇか?

友達と会えなくなっても、父さんと母さんにあえなくなっても、遊べなくなってもいいのか?』


「!!やだっ…!!」


『そうだよな、痛いの嫌だよな。』


110番通報しかけていた母親が自分の子供が泣き止んでいるのを見て留まる。


七海もこの事態がどういう事かよくわからなくなっていた。


『母さんもな、坊主が虫歯で痛がってるのが嫌だから

歯医者で痛くて泣いちまうかもしれねぇけど坊主のために我慢して連れてきたんだ。

そんな母さんにバカなんて言ったら駄目なのは坊主はわかるか?』


「………ママ、ごめんなさい。」


『よし、謝れて偉いな。』


Aはワシャワシャと子供の頭を撫でる。


見事、彼女は事態の収集に成功した。


母親も驚きつつも、すぐにAへの気持ちは感謝に変わった。


「ありがとうございますっ…!!」


『大した事してねぇから気にしなくていい。
あとは頑張ってくれ。』


狂人は感謝の言葉に全く傲る事もなく、目的の駅に颯爽と降りる。


「おねえさん、バイバイ。」


『じゃあな、坊主。』


電車のドアが閉まるまで母親は頭を軽く下げていた。


「…凄いですね。」


『事実を言っただけだ。誰にでもできる。』


「子供の扱いになれてるんですか?」


『いーや、子供はうるせぇから嫌いだね。』


タバコを蒸す狂人は特にそれ以降話す事はなかった。


『…学会バックれるか…』


「駄目です。」


『んだよ、お前には関係ねぇだろーが。』

No.13  庵  歌姫→←No.12  七海 建人



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りゅう(プロフ) - リガロさんこんばんは!こちらの小説拝見致しました!また違ったお話で読んでいて大変楽しいです!夢主もやることは凄いですが時々見せる優しが伝わります! (2021年2月20日 18時) (レス) id: 70aa81165b (このIDを非表示/違反報告)
オレンジ100%(プロフ) - いいですね!!いい感じに性癖にヒットしました!お気に入り登録と評価失礼します。m(_ _)m (2021年1月6日 12時) (レス) id: 812b1ab43b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リガロ | 作成日時:2021年1月2日 0時

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