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ページ12

『んじゃ始めるぞ。麻酔からだ。』


あっ、痛かったら手ェあげろ。と思い出したかのように大切な事を後から言うAさんに少しゾッとした。


左手に置かれたクマのぬいぐるみに至っては夜蛾学長を思い出すので何だか抱きたくない。


麻酔注射はチクッとして凄く痛かったが、いい大人が我慢できないなんてことはない。


……問題は後だった。


『あー…ま、4本ぐらい一気にいくか。』


「っ!?(ちょっと!?)」


ボソッとえげつない事を言うAさんは大丈夫、大丈夫と笑っている。


いや、大丈夫じゃないの私の精神なんですけど。


『よーし、次は抜歯…いや、削った方が早ェか。』


用意されたペンチに冷や汗を流す。


麻酔のせいでそこまで痛くないが、ガチガチ、バキッと不穏な音を聞いて更に心臓はバクバクだ。


『あっ、やべ。…まぁいいか。』


「!?(良くないんですけどぉ!?)」


先程から不安になる事ばかりを言葉に出すAさん。


思わずクマのぬいぐるみを抱きしめてしまった。


『抜歯は終わりだ。次は削るからな。』


だんだん麻酔が薄れてきて痛みを感じるようになった口内。


『もう一回言っとくが、痛くなったら手を上げろよ。』


別の器具を取り出してキィイイン、と嫌な音を出す。


何でかは知らないが歯医者の器具はマッドサイエンティストが持っていそうなものばかり。


…だからAさんが持ってると更に狂気が滲みでる。


ていうか、あの人が持っているものは狂器と化すのだけど。


い、痛い…


そろそろ手を上げてもいいだろうか…と静かに右手を上げる。


……………だが。


『ウケる。』


「っ!?!?(ぇえええ!?)」


その一言だけでAさんは歯を削るのを止めない。


しかも言葉とは裏腹に全く笑っていないのだから自分の感覚を疑わざるおえない。


『おい、もう少し口開けろ。』


「……ッ!?」


『馬鹿、誰が顎外れるくらい口開けっつった。』


ガコッ、と私の顎を一瞬ではめて削りを再開したAさんは改めて狂人だと思う。
______


『オツカレさん。じゃ、うがいして薬飲んでガーゼ噛んどけ。』


「は、はひ…」


葉が抜かれすぎて喋れないわけではない。


疲労がもはや限界に達して上手く口が回らないのだ。


うがいして、鎮痛剤を飲んでAさんにガーゼを噛まされる。


『んじゃ、胃痛が酷くなったら言え。
場合によっちゃ五条、シメとくから。』

No.7  ??→←No.6  伊地知潔高



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りゅう(プロフ) - リガロさんこんばんは!こちらの小説拝見致しました!また違ったお話で読んでいて大変楽しいです!夢主もやることは凄いですが時々見せる優しが伝わります! (2021年2月20日 18時) (レス) id: 70aa81165b (このIDを非表示/違反報告)
オレンジ100%(プロフ) - いいですね!!いい感じに性癖にヒットしました!お気に入り登録と評価失礼します。m(_ _)m (2021年1月6日 12時) (レス) id: 812b1ab43b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リガロ | 作成日時:2021年1月2日 0時

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