episode.33 ページ33
◇貴方side
仕事をしていると時間が経つのは早い。
もう、安室さんと約束していた日になってしまった。
もう何分も鏡とにらめっこしている気がする、けれど……
「……」
手に持っていた黒髪ウィッグを、置いた。
お願いされたんだし、それに傘をさしている。同じような髪の彼もいるから、大丈夫。
そう、思った。ううん、自分に言い聞かせた。
深呼吸し、玄関を開けた。……知っている人物がそこに立っていた。でも、彼じゃない。
「……」
?「久しぶりね」
私の父の妹、叔母だ。
叔母「元気そうで安心したわ」
彼女は、笑っていない笑顔で思っていないことをつらつらと話す。
叔母「それで、話があるんだけれど、中に入ってゆっくりと話をしたいわ。入れて頂戴」
「……ご用件は」
叔母「叔母である私を家に入れないつもり?」
前に私のものを盗んだのは誰よ。
叔母「はぁ、仕方ないわね。貴方、結構稼いでいるみたいじゃない。著作家だったかしら」
「……」
叔母「そこまで稼げるようになったのは、誰のお陰?」
成程、お金をぶん取ろうという事ね。この様子じゃ私が小説家だという事は知らないようね。
叔母「身寄りのない貴方を私が引き取ってあげたのよ?その時の生活費ぐらい払いなさいよ。それが普通でしょ?」
彼女は、両親が残してくれた遺産を、偽の遺書を作りあげてぶん取ろうとして捕まり刑務所に行った。出てきたから私の所に来たのだろう。それだけでは懲りなかったらしい。
叔母「全く……分からないなんて、なんて馬鹿なのかしら。母親も母親よ、兄さんを騙してロシアに連れてくなんて、あり得ないわ」
「ママとパパを悪く言わないでください」
叔母「あら?本当のことを言ってるだけでしょ??」
「ママはそんなことしてない、勝手に思い込んでるのは貴方でしょ」
叔母「っ……貴方ねッ!!!」
右の頬がジンジンする。叩かれたのか、痛いっつの。
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ゆきな☆(プロフ) - paruさん» コメントありがとう御座います!嬉しいです! (2021年5月22日 9時) (レス) id: eaaa1b941d (このIDを非表示/違反報告)
paru - めっちゃ好きです!凄く面白かったです! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 43a47d8e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきな☆ | 作成日時:2020年11月6日 11時