episode.18 ページ18
◇貴方side
レモンパイを堪能していた時、煩い客が来店してきた。客と言っても、ポアロの客ではない。
客「私立探偵の安室透さんですか!」
安室「はい。依頼ですか?」
田辺「私、フリーランスのジャーナリストをしています田辺と申します」
へぇ、私立探偵か。なら、あの盗聴器は彼が仕掛けたのに納得がいく。有栖、何か喋ったな?
有栖「(せッ先生の視線が怖い……何かしたっけ……??)」
安室「それで、依頼内容は?」
田辺「とある人物を調べてほしいんです」
安室「なるほど、どなたを?」
田辺「小説家です。文学賞を受賞した今話題のベストセラー作家、榎戸壮真です」
安室「……なるほど、覆面作家ですか」
田辺「プロフィールを一切明かさない作家です。今注目されている作家ですから、読者の皆さんが一番知りたい事でしょう。だから、お願いします」
有栖川「ッ……」
なるほど、調べ上げて金儲けってね。ねぇ有栖、動揺しすぎだって。隣のコナン君、だいぶ見てるよ?
田辺「どうです?貴方も読者でしたら知りたいでしょう?」
安室「そうですね……僕も榎戸壮真先生の本は好きで、すべて読んでいます。気になると言われれば否定できませんね」
田辺「でしょう!」
安室「……ですが、お断りします」
田辺「えっ、」
安室「仕事には、私情を挟みたくないのですが……これはお断りさせてください」
有栖川「……ッ!?」
「……」
ふぅん。
田辺「何故です!!」
安室「覆面作家の方々が、身元を明かさないのにはいくつか理由があります。
まぁ、本人に聞いてみなければ分からない事ですが……作品に先入観を持たせない為、編集社との契約の為、自身のプライバシーや名誉を荒らされたくない為と、いくつかあげられます。
ですから、一読者としては作者の方が困ることはしたくないんです。そのせいで小説家を引退なんてされてしまっては困りますしね」
田辺「で、ですが……」
安室「さ、この話は終わりです。お引き取りください」
田辺「……」
こんな近くに私の小説の読者がいた事にも驚きだが、まさか、ここまで考えてくれている読者がいたなんて思いもしなかった。
ちょっとだけ、読者がそう思ってくれるような小説が書けていた事にちょっと嬉しく感じた。
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ゆきな☆(プロフ) - paruさん» コメントありがとう御座います!嬉しいです! (2021年5月22日 9時) (レス) id: eaaa1b941d (このIDを非表示/違反報告)
paru - めっちゃ好きです!凄く面白かったです! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 43a47d8e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきな☆ | 作成日時:2020年11月6日 11時